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「魔法少女リリカルなのは」二次創作小説 『幽愁闇恨を孕みし約束』
リリカルなのはの二次創作小説3作目完成しました。

タイトルは『幽愁闇恨を孕みし約束』
八神はやてちゃんがメインです。というかほとんどはやてちゃんです。
11歳です。可愛いです。
公式設定とかもしあったら結構無視しちゃってるかもしれませんけどごめんなさいとしか。
そんな訳で相変わらず脳内妄想設定が吐き出されまくっています、ご了承ください。

前作の『夢幻泡影の姉妹』と更にこの次の話を繋げる為のお話です。

原作だとどうしてもA’s~Stsの10年の間に起きたであろうはやてちゃんの苦労というか薄幸展開が書かれて無いのでもったいないなぁと思ってたのでそういう思いもあって作られてます。
はやてちゃんが一生懸命頑張る内容です。

一応これだけ読んで頂いても大体平気かなと思いますが、上記した前作とか読んで貰えるともうちょっと面白くなるかもしれません。


珍しくヤンデレ成分は少ないです。最後になのはさんがちょろっと出てきますがそこぐらいです。
ちなみにそのなのはさんがちょろっと出てきた辺りの件が時間軸的に『夢幻泡影の姉妹』の4ヶ月ぐらい前になります。




また、この作品を書くきっかけというか、私の脳味噌に火を付けてくれたのが、
「ブラッドハーレーの馬車」
こちらの漫画。
アフタヌーンのアイドル沙村先生の描いた薄幸少女悲譚物語です。
赤毛のアンを目指したらしいけど、うっかりヤッチャッタ☆みたいな内容。
薄幸少女が見たい人は超お勧めです。
色々影響を受けております。昔からむげにんとかで受けてるけど、この漫画は特に来ました。


魔法少女リリカルなのは ウィキペディア
一応原作を知らない方は上記リンクを参考にしていただければと思います。



こう正月のお年玉的なものだと思ってもらえたらと思います。
内容はまったくめでたくないかもしれませんが。


という事で「続きを読む」で全文表示です。


月が銀色に輝く空だった。
透き通る月光が地上をささやかに照らし出す。季節は1月中旬、雪こそ降っていないが呼吸の度に喉の奥が冷える程の寒さだった。

八神はやては寒空の中、とある港の倉庫街に居た。
全身を包むのはバリアジャケット、片手にはシュベルトクロイツ(剣十字杖)を握っていた。
完全な戦闘態勢。
港に無数にある倉庫の内の一つ、その扉に背を預け突入する機を窺っていた。
・・・たった一人で。



:::
八神はやてに対して緊急任務が舞い込んだ。
それは管理局で正式な特別捜査官として任命されてから初めての任務だった。
その内容は、八神はやての故郷である地球、それも日本での人身売買に関わる事件の捜査だった。
地球のように管理局から離れた「未開の地」でひっそりと行われる時空犯罪、中でも人身売買はどんなに刑罰を重くしても決して発生件数上位から外れる事がない。現地の人間を安価で仕入れ、遠く離れた異界で売るという利益率の高さが犯罪者から好まれる要素であり、そして何よりどんなに刑罰を重くしても発生場所が広範囲に渡り過ぎており実際の逮捕率は管理局が把握している発生件数の内5%に満たないというローリスクハイリターンな事にある。
また、地球はバイヤー達から地理的に非常に恵まれている好条件な土地らしく、時空世界における人身売買の中継地点として好んで使われていた。今回、小規模組織が拠点としている港の倉庫が判明した。上手くすれば大規模組織の手掛かりも掴めるかもしれない絶好の好機である。

次の事件への足がかりとなる重要な人身売買の捜査が八神はやての特別捜査官としての初の任務となった。
そして申し渡された任務内容、
「単独で敵拠点に潜入、捕われている少女4名を救い出し、全ての犯人を可能な限り逮捕、困難な場合は殲滅せよ。最重要目標は上部組織の情報入手にある」

当日、八神はやての私兵部隊でもある守護騎士達には別の任務が与えられ、作戦への参加は認められず、その他の増援も認められず。
完全な単独任務、計算ずくめの都合の悪さ。
若干十一歳にして特別捜査官というキャリアを積み上げ、魔導士ランクSという規格外の能力を持っている八神はやてに「捜査中の事故」に遭遇してもらいたい人間は数え切れない程に居た。

だが、八神はやては一言も文句を言わずに任務を了承。
弱みを見せれば組織内で直ぐに消される事を承知しているからこそだった。

「相手は魔導士ランクがCにも達していないようなゴロツキ二十人です、Sランクの八神はやて捜査官殿には簡単過ぎますかな」
まだ正式な所属部署が決まらない八神はやてに仮の上司はそう言いながら任務を与えた。



「はやて、本当に大丈夫?」
出発前に守護騎士のヴィータは心配そうに言った。
八神はやてがたった一人で実戦に赴くのは初めての事、主人の守護を第一とするヴィータは心配で胸が張り裂けるような思いだった。
「こんなの、いつもの事や。心配しなくても夕飯までには帰るから、自分こそ怪我しないようにな」
ヴィータの頭を優しく撫でながら八神はやては微笑んだ。
手の震えが伝わらないように注意しながら・・・。


:::
これから突入する今となっても両手が震えていた。
実戦経験も浅く、普段は守護騎士によるサポートを受けて後方から極大魔法で敵を殲滅するスタイルの八神はやてにとって単独での屋内への突撃任務、そして要救助者の保護まで行うなど未知の世界だった。
何度も深呼吸を繰り返す。肺の中に澄んだ空気が広がり、真っ白な吐息が夜闇に溶ける。
全身に広がる震えは一向に止まらない。
「それでも、やるしかない。前進するしかない、そういう道を選んだんだから・・・」
自分達の有用性を見せ続けなければ、犯罪者として管理局は家族全員を犯罪者として暗い監獄に入れるだろう。命がけで高い能力を見せ続ける事だけが、日常を保つ唯一の手段。
八神はやての選んだ道は後退の許されない厳しい世界だった。



墓場のように静まり返った深夜の倉庫街。
これから突入しようとする倉庫からだけは明かりと声が漏れている。先程から続いていた男達の声が途切れだしていた。相当な人数が寝入ったと予測―――八神はやての扱える探査魔法では内部を探る事も出来ない。

正面の貨物搬入用大型扉の下部に設けられた通用口のドアノブを掴む。施錠はされていない。
「こんな時、なのはちゃんならこのでかい扉を魔法で吹き飛ばして突入するんやろうな」
だが、あいにく自分の魔法では内部に捕われている人間だけを傷つけない様に扉だけを破壊するなんて器用な真似はできない。倉庫街ごと塵も残さずクレーターにするのが関の山だ。
無力な戦略級魔砲少女、八神はやては唾を飲み込み、最後の深呼吸を深く吸い込む。
ドアノブを掴む手に力を入れ、全力で扉を開く―――素早く内部へと踏み入る。
「時空管理局、特別捜査官八神はやてや!異次元における人身売買、その他複数の次元犯罪の罪で全員逮捕する!武器を捨てて投降しろ!」
広い倉庫内に八神はやての声が響き渡る。
しかし声を上げた八神はやて本人は全身に広がる震えが止まらない。

内部に居たのは五十人以上の男達だった。
半数は倉庫の端に敷いた毛布の上で仮眠していた・・・が、全員起床。

そして倉庫中央には場違いな大型ベッド。
その周囲で少女4人が男達に嬲られていた。もう、悲鳴を上げる力も残って居ないのか、4人供虚空を見つめたまま男達の動きに合わせて体を揺らし続けていた。

「おいおい、本当に来たよ。特別捜査官様がよぉ」
一人の男が八神はやての姿を見ながら嘲るように声を上げる―――下半身は少女の口に預けたまま。
男の言葉に違和感を感じながらも、八神はやては震える体を押さえつけるかのように声をあげる。
「お前ら!その娘達から離れろ!逮捕どころか全員この場でぶち殺されたいんか!」
両手で十字杖を構え、威嚇する。

しかし、男達は一向に怯まない。その場に居た男達全員が声を上げて笑い出した。
「げっははは、ブチ殺すってよ!マジかよ、こいつ。ろくに実戦経験も無い、射撃魔法も大した事無いランクSの魔導士様が怒ってるぜ!」

八神はやては愕然とした表情を浮かべる―――情報がリークされている。
「知ってるんだぜ、こんな室内じゃまともに戦えないんだろ。バリアジャケットは立派だが、実際はそこらに居る女の子と大して変わらないんだよな」
戦力どころか、八神はやて自身の特性、弱点まで全てが筒抜けになっていた。
「どうして・・・そんなの、どこから・・・」
男の一人が懐から何かを取り出しながら答える。
「匿名の通報があったのさ。俺達のお得意様らしいけどな。素性は知らねぇが、管理局の人間なんじゃねーの?はやてちゃんは裏切られちゃったみたいだね」
男の手に握られていたのは地球でも使われているような自動式拳銃だった。
八神はやてはその黒い鉄塊を見て、気圧されない様に声を上げる。
「そんな鉄砲、怖くないわ。バリアジャケットの障壁で鉛玉なんか全部弾かれる。管理局の内通者もお前ら全員を捕まえてからゆっくりしら・・・」

乾いた破裂音が声を掻き消す。
八神はやてが全部言い終わる前に、一発の銃声が遮った。
銃弾は八神はやての頬をかすめ、一筋の赤い線を刻んでいた。
「そ、そんな・・・。嘘・・・、どうして・・・」

男は硝煙が零れる銃口を見せ付けながら、怯える小動物をいたぶるかのような表情で答える。
「これも匿名の奴からのプレゼントだ。対魔導士用に障壁貫通の術式を施した特殊弾らしいぜ。はやてちゃんのバリアジャケットが常時展開する障壁ぐらいはぶち抜けるって聞いてたけど、本当らしいな」

罠。
これは八神はやてに「捜査中の事故」に合って欲しいという度合いを超えている。
暗殺計画に等しい用意周到さ。
完全に嵌められた事に八神はやては奥歯を噛み締めながら気付かされた。

「そういう訳だからさ、はやてちゃんもこっち来てエッチな事しようよ。君くらい可愛ければ良い買い手がつくと思うよ。金持ちの変態相手に毎日犯されていれば何不自由ない生活も送れるかも知れないし、管理局じゃ苛められちゃってるみたいだから丁度いいんじゃね?」

俯いていた八神はやての口から声が漏れる。
薄く開いた口が微笑みを浮かべていた。
「ふふ、上等や。どこまでも、いつまでもやってやるわ。全部終わらせて、家に帰る。
約束したんや、みんなと・・・夕飯食べるって!」
言い終わると同時に八神はやてが前方の男に向かって突き進む。飛行魔法を使い、長大な跳躍―――男の眼前に一瞬で到達。
八神はやての心中には諦念の欠片も無い、あるのは幸福への渇望、それを支える情念のみ。
「死ね」
両手で持った十字杖を横殴りに振り払う。
男が銃の引き金を引く間もなく、顔面の下半分を十字杖側部の刃で吹き飛ばされる。
薄汚い床に男の下顎部分が不快な音を立てて叩き落される。
そのまま悲鳴を上げて倒れ伏せる男を踏み付けて八神はやては叫ぶ。
「私達はどんな困難があっても突き進むしかないんや。それ以外に日常を保つ方法が無いから・・・私達の罪はそれぐらいじゃないと贖えないから・・・。
これが最後通告や、全員死にたくなかったら投降しろ!」

男達がその声に反応して一斉に動き出す。
それぞれの手に拳銃、サブマシンガン、ショットガンを掴む―――無論、全て障壁貫通弾を装填。
「撃て!」
無数の炸裂音が大音響となり倉庫内を埋め尽くす。
八神はやては瞬時に全方位のバリアを展開、バリアジャケットの障壁よりも強固な防護壁が全身を包み、全ての弾丸を弾く。
そのまま近場に居る3人の男達に十字杖=十文字槍を振りかざしながら突撃。
八神はやては立て続けに放たれる散弾を全て弾きながら男の顔面目掛けて十文字槍を鋭く突き出した。男の眉間に刃が根元までめり込む。
残された2人の男が半狂乱になりながらサブマシンガンを連射する。フルオートで吐き出された弾丸は3秒で終了。合計180発もの弾丸が八神はやてに向けて放たれていた。
結果、数発の弾丸が防護壁を貫き、八神はやてに直撃弾こそ無かったものの腕と足の肉を少しずつ削ぎとっていた。
2人の男は急いで予備マガジンを取り出し、素早く装填しながら声をあげた。
「おい、撃ちまくればあのバリアも貫けるぞ!やっぱりこんな屋内での個人戦闘じゃ魔導士ランクCにも満たないってのは本当みてぇだな!」
そして再度八神はやてに弾丸の豪雨をぶちまけようとした瞬間、顔面を掴まれた。
まだ小さくか細いはずの少女の腕からは信じられない程に強い力が込められている。
「確かに、私は苦手なんよ、こういう戦いは。みんなシグナムやヴィータに任せっぱなしやったから・・・。これからの克服するべき課題として今日はよう勉強させてもらったわ。お礼に私の大した事無い射撃魔法、味わわせたる」
八神はやての手が男の顔を掴んだまま紫の光を纏い、そのまま単純な魔力弾が零距離で放たれる。
鈍い爆音と共に男の頭部が中身を撒き散らしながらバラバラに砕かれた。
それを見ていた直ぐ隣の男がサブマシンガンを八神はやてへ滅茶苦茶に放つ。殆どの弾丸が弾かれるが一発だけ防壁を貫いて八神はやてのこめかみを掠め、ベレー帽を吹き飛ばす。
しかし、無常にも弾丸が底を突く。同時に振り下ろされた槍刃が男の心臓を串刺しにする。
「私だって魔導士の端くれ、身体強化ぐらいは出来るんやで。女の子だからって甘く見たらいかんって事や」
八神はやては眼前に転がる3つの死体に背を向けて振り返った。
「一人ぐらいは生け捕りにしたるから安心してええよ、他は全員死んでもらうけどな!」
八神はやてが男の集団に向けて再び飛び出す。
その表情は彼女の親友でもある「白い悪魔」と同等の凶悪な笑みを浮かべていた。

薄暗い倉庫を照らす閃光―――放たれる弾丸の嵐が少女の肉体を少しずつ削り取る。
血飛沫を巻き上げながら振り回される金色の十字槍―――飛び散る男達の腕・脚・頭。
倉庫内に爆音と悲鳴の合唱が広がっていく。
障壁を貫いてくる弾丸で八神はやてのバリアジャケットが引き千切られる。
全身の肉が少しずつ抉られる。
四肢からはおびただしい出血が零れ落ち、床に赤い斑点を描く。
それでも、止まらない。
自身が屋内で扱える簡単な射撃魔法とシグナムから護身術程度に教わっていた槍術だけが八神はやての武器だった。

死の臭いが充満する密室、繰り広げられる狂乱の宴。
冷たいコンクリートの床が見る間に温かな赤色で塗りたくられる。
十二分。
僅かな時間だった。八神はやて本人には何時間にも思えていたその間に敵戦力は残り5人にまで減っていた。
倉庫内には床が見えないほど人間の部品が冗談のようにばら撒かれていた。
しかし、八神はやての受けた傷も深い。9mm弾の直撃を肩と太腿に一発ずつ、散弾数発が脇腹にめり込んでいた。その他にもかすり傷とは言えない様な傷が全身に刻み付けられていた。
「はは・・・これじゃあ、家に帰ったらシャマルに治してもらわなくちゃ。怒られるかなぁ」
小さな呟き、未だに身体は震えている。

突然、倉庫全体を揺るがすような轟音が響いた。
八神はやては音の方向に対して瞬時に強固なシールドを展開―――同時に重い衝撃音。
しかし勢いを受けとめきれずに吹き飛ばされ、背後にあった倉庫中央の大型ベッドに叩きつけられる―――破片を周囲に撒き散らしながら大型ベッドが瓦礫の山と化し、八神はやての姿が埋没した。
「やったか!?」
床に寝そべった狙撃姿勢のまま男が叫ぶ。周囲には残った男達が全員揃っている。
二脚で支えられた12.7mm対物狙撃銃。装甲車や戦闘ヘリの装甲を容易に貫く大口径狙撃銃で放たれた弾丸が八神はやてを直撃していた。

砕けたベッドの瓦礫の中に八神はやては居た。シールドを形成するために突き出していた左肩が衝撃で脱臼、だらんと垂れ下がっている。

―――あれは、流石にあかんな・・・。
全方位に展開するバリアでは防御不能、一方向にのみ集中展開するシールドで弾くのが精一杯。しかし、シールドを展開している間に他の男達に回りこまれたら後ろから撃たれて一巻の終わり・・・。
まだ、男達は迷っている。
慎重にもう一度対物ライフルを撃って八神はやてがシールドで防ぐのを確認してから、取り囲むつもりでいる。
だからこそ、八神はやては次の一撃を放たれる前に敵を殲滅しなければならない。
ベッドの瓦礫から出て行って、狙撃を受ける前に敵全員を消滅させる方法・・・そんな物は思いつかない。どんな魔法でも発動するよりも先に被弾するだろう。
絶望的状況―――だが、諦めない。
「家に帰って、みんなで御飯食べるって約束したんもんな・・・」
瓦礫の影で打開策を講じていると、そっと手を握られた。男達に犯されていた少女達4人が八神はやての周囲に集まっていた。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
少女の一人が問いかける。男達に乱暴されて、全身が痣だらけになっていた。
「大丈夫、必ず助けてあげるから・・・お姉ちゃんを信じてな」
他の少女達も全員八神はやての手を握る。震える手が幾重にも重なる。
「助けて・・・助けて・・・」
涙を浮かべて助けを求める少女達が八神はやての双眸に映る。

―――これが私達が選んだ贖罪の道。こんな子達を一人でも多く助ける事。

痛みを堪え、両腕を広げて少女達を全員抱きしめる。
「ちょっと待っててな。すぐにここから助けてあげるから、お姉ちゃんを信じて・・・」
少女達が一斉に頷く、たった一つの希望に全てを託す。

何時の間にか八神はやての震えは止まっていた。




対物狙撃銃を構えた男が姿勢を崩さないまま言う。
「おい、もう5分以上経つが少しも出てこねえ。まさか最初の一発で死んだとかじゃねぇよな」
別の男がサブマシンガンを構えたまま答える。
「流石に死んじゃいねぇだろ、曲がりなりにもSランクの魔導士だぞ。シールドで防いでいたしな。何か企んでやがるかもしれねぇが、どの道こうなっちまえばこっちの勝ちだ。もう少し待っても出てこなけりゃ左右から回りこんでサブマシンガンでいぶり出してやるから、そこを狙撃すりゃ終わりだ」
そう言ってサブマシンガンの男が残った3人に同じ事を伝えようとした瞬間、瓦礫の端から飛び出す影が映り、同時に対物狙撃銃の轟音が響く。
飛び出した影=バリアジャケットの上着部分を凶弾は貫いていた。
「馬鹿!あんな単純な手に掛かりやがって!早く弾を込めろ!」
対物狙撃銃はその構造上、一発ずつ弾丸を装填しなければならなかった。決定的なタイムロス。
そして瓦礫から飛び出す八神はやて、凄まじい速度で呪文を詠唱―――得意の広域破壊魔法を放つ準備を整える。
「やべぇぞ!あの野郎まとめて俺らを消し飛ばす気だ!クソ!売り物のガキを人質に取っとくべきだった!」
「良いから撃ちまくれ!時間稼いで化物ライフルで仕留めるんだよ!」
4人の男達が一斉にサブマシンガンを乱射。連鎖する爆裂音が倉庫内を蹂躙する。
しかし、八神はやては通常の何倍もの速度で攻撃魔法の発動準備を進めると同時に全方位の障壁も展開していた。障壁に無数の弾丸が着撃、盛大に火花を散らせる。
それでも数発の弾丸が障壁を貫き、八神はやての身体に突き刺さる。だが呪文詠唱は止まらない。
天性の才能が発露、常識を打ち破る速度で広域破壊魔法の発射準備が整った。
八神はやての周囲に3つの魔方陣が浮び上がる。

しかし対物狙撃銃の弾丸装填もほぼ同時に完了―――即座に発射。
雷鳴のような轟音が空気を引き裂く。

八神はやては叫ぶ、最後の呪文。
「響け終焉の笛、ラグナロク!」
十字杖を男達に向けて振り下ろす。周囲3つの魔方陣から溢れ出す紫色の極大魔力砲。
大型戦艦をも一撃で沈める超砲がたった5人の人間を消滅させるために放たれる。
八神はやての3m手前で狙撃弾が魔力砲により蒸発。
そのまま直線上に居た男達を塵も残さず消滅させ、倉庫の壁面を吹き飛ばしながら紫炎が海上を1km程進み、冷たい夜空を焦がす。射線上には夜闇と混じった魔力の残滓が藍色の帯を生み出し幻想的な光景が広がった。
八神はやての視界に存在していた全ての物体は虚無へと消えていった。

何時の間にか夜空は雲が覆い、雪を降らせていた。
倉庫に開けられた巨大な穴から雪が吹き込んできていた。
雪の粒が十字杖に触れ、音を立てて蒸発する。
軽い放心状態となっていた八神はやては呼吸を整えながら自身の勝利を確信していった。

「お姉ちゃん!」
瓦礫の山から少女達が飛び出し、八神はやてに抱きつく。
「ありがとう!助けてくれてありがとう!」
八神はやては少女達全員を抱きしめた。
途方も無い達成感が心を満たしていた。
「後退の許されない道でも、この娘達を助けられるんなら・・・良いよね」
八神はやての瞳からは自然と涙が零れていた。



:::
その後、管理局の調査、回収班が到着。
現場の調査を行い、多数の証拠物件を押収。下顎を吹き飛ばされながらも辛うじて生きていた犯人一名のみ生存を確認、管理局の尋問部隊に引き渡される。
そして救助された4名の少女達も回収班と供に管理局本局へ移送された。身元を確認した所、全員が孤児で色々な時空世界から買い取られたり引き取られて連れて来られた事が判明。帰る家も故郷も無い彼女達は管理局が預かる事になった。

八神はやては管理局で怪我の治療を受けた。
全身に大小十三発の被弾、全て奇跡的に急所を外れていたが重傷である事に変わりはなかった。シャマルが自身の任務を終えて直ぐに駆けつけ、高度な治癒魔法により、次々と傷が消えていくが完全回復には到らず。結局その日から数日間、八神はやては久しぶりに車椅子生活を過ごす事になった。

管理局内に居たとされる内通者に関して調査班からの回答。
「目下捜索中、ただし手掛かりが少なく捜査は困難を極めると思われる」
明確な拒否反応。
私兵部隊のシグナムとヴィータは独自に調査を開始しようと提案するも主人である八神はやてに窘められる。
「藪を突いて蛇が出てきたら面白くないやろ」
結局、内通者の存在は闇の中に消えた。


事件発生から一週間が経った頃には八神はやても自力歩行が可能な程度には回復した。
歩けるようになってから最初に向かったのは管理局だった。
事件の顛末が何一つ知らされてこない。犯人達から得られた上部組織の情報はどの程度あったのか、次の捜査への足がかりを作る事が出来たのか、自分の有用性を証明する事が出来たのか。
あの少女達はどうなったのか・・・。
事件当日に全員が孤児でしばらくは管理局で保護されるという所までは聞いていたが、その後は一切連絡も無く居場所も不明のまま、顔を見ることも出来ていなかった。
八神はやては彼女達に自分を重ねていた。両親を早くに亡くし、孤独な生活を強いられていた記憶が蘇る。

「―――もし良かったら、私の家の子になって欲しいな」
早く伝えたかった。また自分の家族が増えると思うと嬉しかった。
誰かが孤独な思いをするのはもう嫌だったから。


管理局の事件調査を担当している部署に到着。
担当者に取り次ぐよう受付に伝える。
返答―――不在。
半ば分かっていた事だったが、やはり拒否反応。

次に八神はやては児童保護を担当する部署へ行く。ここなら少しはまともな返答が得られるかもしれない・・・。
管理局の児童保護施設、周辺の新しい施設から取り残されたように古い建物が事務棟から離れた場所にある―――存在そのものを厄介払いをされたような印象。
建築時から変えられる事無いままのくたびれたドアを開き内部に入ると、受付の女性と直ぐに視線が合う。
「はやてちゃん、久しぶりね!どうしたの突然、うわぁ、嬉しいなぁ!」
八神はやては管理局から得られる給金の一部をこの施設の維持に寄付し続けている。
先に入局した親友であるフェイトも同じく施設維持の寄付を行っていた、自分と同じ境遇の子供達を助けたいという思いは人一倍強い。その話を聞いて八神はやても寄付に参加していた。

暇を作ってはここを訪れているので受付の女性とは顔見知りだった。
「こんにちは。最近中々来れなくて・・・本当はもっと子供達の顔、見たいんですけどね」
受付といっても簡素なテーブルセットがあるだけで間仕切り一つ無い。周りに居る子供達が元気に飛び回る姿が目に映る。
慣れた手付きで八神はやては受付の椅子に腰掛けた。
早速、本題に入る。
「実は一つお聞きしたい事があって今日は来ました。一週間ほど前に第97管理外世界の地球という星で起きた人身売買の捜査を私が担当しました。その時に保護された4人の女の子達がここに来た筈ですが、今もここに居るんでしょうか。もし、居るなら会わせて欲しいんです」
相手を真っ直ぐに見据え、単刀直入に用件を伝える。
女性の返答、その顔からは先程までの微笑が消え去っていた。
「4人の女の子は・・・、来ました。事件翌日にはこの保護施設に移送されて・・・。でも、今は・・・ここに居ません」
心の隅で渦巻いていた嫌な予感が八神はやてを包み込む。
「ど、どこに居るんですか!あの子達は!」
女性に必死で詰め寄る。
「それを知ったら、はやてちゃんは絶対に後悔する・・・。だから私は、言いたくない。それでも聞きたい?」
何時の間にか女性の両目から涙が零れていた。深い後悔の念。
「聞かせて下さい。私は、あの子達を迎えに行きたいんです」
強い意思を持って答える。彼女達に「助ける」と約束したのだから。
女性は深く息を吸い込み、口を開く。
「あの子達は全員、管理局の『福祉活動』に参加する事になって・・・連れて行かれたわ」
八神はやてにとっては初めて聞く話だった。
「『福祉活動』って・・・、どういう事ですか?」
女性は重い口を開く。
「管理局が最近始めた自立支援計画。未成年の孤児でも自立生活を営めるように管理局が仕事を与える、身元不明で魔法能力も無い普通の子供でも生きていけるように・・・。っていう夢のような話」
都合の良すぎる話。そんな事なら八神はやてに何の障害も無く彼女達の勤め先が伝わってきても良いはずだった。聞けば聞くほど、胸の中に黒いモノが淀みとなって満たされていくような感覚を味わわされる。
「それじゃあ、あの子達は今どこかで働いてるって事ですよね。どこに・・・居るんですか」
女性が、八神はやての手を握る。まるで懺悔をするかのようにすがり付いていた。
「私は止めたの!必死で、何回も何回も・・・でも駄目だった。あの子達は無理矢理連れて行かれて・・・。ずっと会えなくなってしまったの・・・。私を許して、はやてちゃん。ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
女性が八神はやての手を握ったまま大声で泣き始め、あとは会話にならなかった。
異変に気付いた子供達が周りに集まってくるが女性のすすり泣く声は一切やむ事無く、しばらくの間施設内に響いていた。

帰り際、両目を赤く腫らした女性が八神はやてに一枚の紙片を渡す。
「そこに、あの子達は居るはずよ。行くか行かないかは、はやてちゃんが決めて」
八神はやてはA4用紙に印字された文字を読む。
そこには、予想もして居なかった施設名が記載されていた。
あんなに可愛い子供達が関わる事など決してあってはいけない施設。

刑務所だった。



:::
終身刑を申し渡された凶悪な犯罪者を専門に収監している刑務所。
そんな場所に八神はやては居た。
教えてもらった住所を頼りに一目散に向かった先は、巨大な外壁で周囲を囲まれた冷たい世界だった。
正面ロビーにある受付に身分証明書を提示し、用件を伝える。
「何日か前、ここに4人の女の子達が『福祉活動』で送られてきたはずです。会わせて下さい」
受付に居た男性は八神はやての身分証明書を確認、コピーした後、何事か内線電話で話し始める。何かの確認を得ているようだった。
「結構です、八神捜査官。5番の面会室でお待ち下さい」
無機質な声で男が告げる。
言われるがままに八神はやては指定された面会室に入る。

そこは、魔法防壁処理された強化ガラスで部屋が二つに分けられた空間だった。
「まるで、あの子達が犯罪者みたいやないか・・・」
八神はやては爪が手の平にめり込む程に拳を握り込んだ。

十分程待つと、ガラスの向こう側にある鉄扉が重い音を軋ませて開かれた。
刑務官に引きつられて4人の少女達がパイプ椅子に座らせられる。
鉄扉を締めて退室する前に刑務官が八神はやてに告げる。
「面会時間は十五分です。また面会時の音声、画像データは全て保存させて頂きます」
言うだけ言って、鉄扉を締め施錠する音が冷たく響いた。

部屋に残されたのは八神はやてと4人の少女達だけだった。
初めて会った時よりも少女達は疲弊していた。
体中に痣があるだけでなく、包帯だらけになっている。中には骨折している子も居れば、片目に眼帯を装着している子も居た。
「み、みんな・・・どうして・・・」
八神はやては声も上げられなかった。
ガラスの向こうで少女達が初めて会った時と同じく助けを求める。
「お姉ちゃん、助けて・・・。怖いよ、毎日毎日男の人達に痛い事されるの・・・。これじゃあ、捕まってた時の方が良かったよぉ。怖いよ、痛いよ・・・助けてぇ」
少女達がこの施設でどんな『福祉活動』をしているのか八神はやては理解した。
刑務所内での受刑者の暴動、脱走を事前に抑え込むための施策。
狼の群に羊を落とし、飼いならす。餌を与えて獣の牙を抜き懐柔する。それが『福祉活動』の正体。加えて児童保護施設への出費を抑える事が出来る。
反吐が出る程に効率的な政策だった。

自分の無力さに全身の力が抜けた。
自然と涙が零れだす。
「ごめんな、ごめんな・・・こんな事に・・・こんな事するつもりやなかったのに。私がやりたかったのは、こんな事じゃない・・・。ごめんな、ごめんな・・・」
ガラスの向こうで少女達も声を上げて泣き始める。
室内に悲愴な声が木霊する。

泣きはらしている間に何時の間にか面会時間が残り1分を切っていた。
伝えるべき事を伝えなければならない。
涙を堪え、八神はやてが少女達に希望を与える。
「お姉ちゃんが、すぐにそこから出してあげるから・・・。あと少しだけ頑張るんや。必ず迎えに来るから、そしたらみんな私と家族になろう。一緒に家に帰ろう」
4人の少女達の瞳に消えかかっていた光が灯る。
互いを結ぶ新しい約束。幸せを掴む約束。

八神はやては無理矢理作った笑顔で少女達が鉄扉の向こう側へ消えていくのを見送ってから部屋を出て行った。



一旦家に帰るなり、現在の家族である守護騎士を集めて全ての事情を話した。
満場一致で少女達を家族として迎え入れる事に決定。
家族総出ですぐさま法手続きを開始する。
八神はやては率先して書類作りを行う、日々の仕事に忙殺されながらも動き続けた。
毎日、差し入れを持って刑務所へ面会に訪れた。

日を増すごとにやつれていく少女達。

彼女達には名前が無かった、親が名付ける事無く彼女達を捨てていったから・・・。刑務所内では何かの部品番号のような数字で呼ばれていた。
彼女達に八神はやては名前を付けてあげた。
スミレ、ユリ、カエデ、サクラ。美しい花からとった名前を4人はとても喜んだ。お互いに何度も名前を呼び合う姿は姉妹のようだった。

何度も面会に訪れるうちに4人の好みも分かってきた。
スミレはケーキが好き。左腕の骨が砕けて動かせないけど片手で美味しそうに食べる。
ユリは苺が好き。右目が見えなくて何度も失敗しながらフォークで苺を取って頬張る。
カエデは人形が好き。右足の腱が引き千切られ、足を引きずりながら歩くけど八神はやてがくれた兎の人形をいつも大事に抱えている。
サクラは写真を見るのが好き。喉を潰されて声が出せないけど、八神はやてが自宅から持ってきた家族の写真を見せると、外に出て一緒に暮らすのが楽しみだと言うように笑う姿がとても可愛い。
想像を絶する辛苦を与えられながらも4人は八神はやてが面会に来ると必ず笑顔を見せてくれた。


しかし、彼女達を養子に迎える手続きは遅々として進まなかった。
煩雑な書類手続き、許可申請を何日も待たされた。管理局に書類を提出しに行く度に煙たがられる。
「犯罪者の独りよがりの自慰行為」
どこからとも無く八神はやての悪い噂が立ち上る。
元犯罪者というレッテルが書類手続きを通常より何日も遅らせた。
八神はやては毎日衰えていく少女達の体を見せ付けられながら耐えた。ここで自棄を起こして全てを無駄にする訳にはいかなかった。


八神はやてが初めて刑務所を訪れてから9日後、ついに養子縁組の許可申請が受諾された。
喜び勇んで、守護騎士達全員を引き連れて新しい家族を迎えに行った。
道中、部屋割をどうするか、これからは食事の量を増やさないといけないとか、学校をどうするか等、夢のような話で持ちきりだった。みんなが幸せになれる未来を信じて。


刑務所に到着し、八神はやては何時もの様に受付を訪れる。ただ、普段と違うのは面会の申請ではなく、少女達を引き取る申請を行う事だった。
しかし、受付の男性からは信じ難い言葉が告げられる。

「残念ですが、その申請書は既に無効です。あの子供達は全員、昨晩の『福祉活動』において業務上の事故で亡くなりました」

世界が暗転した。
理解が追いつかない。
八神はやての胸に溜まっていた黒い淀みが全身を冒す。
「嘘だ!!」
絶叫。
受付の男に掴みかかり、カウンターの外へ無理矢理引きずり出す。
男の双眸には暗い炎を宿した少女の瞳が映る。とても十一歳の少女が放つとは思えない凄絶な迫力に男が言葉を失う。
「嘘だ!嘘だ!!昨日まであんなに元気に笑ってた!あの子達は私の迎えを信じてずっと待ってる!!昨日約束したんだ、『明日迎えに行くからね』って!!だから・・・嘘だって言えや!」
絶叫、絶叫。
男の首を圧し折りかねない勢いで締め上げる。
だが、望みどおりの回答は決して返されない。
「お前らが殺したんだ!絶対に許さない!殺してやる!!お前ら全員、一人残らず殺してやる!!」
静謐なロビーに八神はやての淀みが吐き出される。

騒ぎに気付いた警備員が駆けつけて八神はやてを取り押さえ、それを守護騎士達が止めさせる・・・しばらくの間、正面玄関のロビーで繰り広げられる喧騒。
何時の間にか渦中の八神はやては床に膝を着いて泣き出していた。
その声は年相応な少女そのものだった。


騒ぎが収まり、形式上の謝罪をした。
最後に頭を下げて彼女達の遺体を見せてもらう事にした。

遺体安置所を訪れると少女達の遺体が無造作に床に転がされていた。
全員、傷だらけだった。今日まで生きてこれたのが不思議なくらいに。
心も体も限界などとっくに超えていたはずだった。
それでも八神はやてが迎えに来ることを信じて我慢して我慢して、耐えていた。
命だけでなく衣服すらも剥ぎ取られた全裸の少女達を八神はやては一人ずつ名前を呼んで抱きしめた。冷たくなってしまった身体に温かい涙が落ちる。
どんなに力強く抱いても帰ってこない時間。
「待たせてごめんな、本当にごめんな。もっと、もっと早く来なくちゃ・・・駄目だったよね・・・」
今にも消えてしまいそうな程に小さくなった八神はやての背中にヴィータがそっと手を添える。
「はやては良くやったよ。あれが限界だった、違法ギリギリの手続きだってやったし、上の人間を何人も脅してここまでやったんだ。だから、自分を責めないで・・・」
八神はやてが4人の身体を抱き寄せながら答える。
「私は毎日面会に来るたびにこの子達に希望をちらつかせた。みんな私を信じて、どんな事にも耐えてきたんだよ。とっくに限界は超えてた・・・それでも私が来るとこの子達は笑顔で迎えてくれたんだよ・・・笑ってたんだよ!!私は、こんな事がしたかったんじゃない。こんな事・・・」
少女達の笑顔が八神はやての脳裏に蘇り、全身に広がる虚無感が止まる事無く加速し続ける。

4人の身体を抱いたまま、八神はやては大声で泣き続けた。
誰も口を開く事が出来ない。
喉が引き裂ける程に声をあげる八神はやてを誰も止められなかった。

これが、彼女の初めての単独任務だった。



:::
その後、八神はやては4人の遺体を引き取り、自分の故郷である海鳴市に連れて帰った。
海の見える高い丘に4人の墓を作り、埋葬した。
墓の周りには4人の名前と同じ花が咲くように広い花壇が設けられ、幾つもの草花が植えられていた。

毎年、命日になると八神はやては墓を訪れて4人の好きだったものを供えていった。



また、事件から丁度1年が経った頃、4人の居た刑務所で毒ガス騒ぎが起きた。
多数の囚人、監守、刑務官が死亡する大惨事となった。死者全員、原因不明の窒息が直接の死因となっていた。現場状況から便宜上毒ガスを使われたと考えられているが、何一つ証拠は残っておらず・・・本当に毒ガスが使われたのかも定かではなかった。
この事件の担当捜査官は八神はやてとなったが、あまりにも証拠が無さ過ぎる事と管理局側としてもあまり事を大きくしたくないという点から迷宮入りとなる。これが八神はやてが捜査官になってから初めての任務失敗となった。
また、この毒ガス事件と同時期に未成年孤児による『福祉活動』が人道的見地から廃案となり、撤廃された。『福祉活動』施策発案者達も相次いで不正が発覚、管理局から姿を消した。
管理局側が毒ガス事件から芋ずる式に面倒な事が露見する事を恐れたという説もあるが、詳細は不明。
これら一連の出来事に八神はやてが関与しているという噂も立ったが、何一つ証拠は無かった。八神はやて本人も関与については黙秘。真実は闇の中へと落ちていった。

八神はやてはその後、着実にキャリアを積み重ねていく。
数年後、彼女は念願の独自部隊を設立運営することになるが、それはまた別の話。





:::
八神はやてに深い傷痕を刻んだ人身売買捜査から2年後、とある休日の会話。

来月から中学2年生になる、3月末の春休み中だった。
高町なのはは八神はやての自宅に呼ばれていた。守護騎士も全員管理局に出勤済み、完全に2人きりで話をしていた。
普段ならもう一人の親友フェイトも呼んでいる筈だが、その日はなぜか高町なのはだけが呼ばれていた。
「私、将来は自分が自由に動かせる部隊が欲しいんよ。そして困ってる人、中でも誰にも助けを求められないような人を進んで助けていきたい。そういう部隊が欲しいと思ってる」
客間に2人きり、差し出された紅茶に口をつけてから高町なのはが答える。
「良いと思うな。私も管理局の悪い所は段々見えてきたし。はやてちゃんだったら指揮能力もあるから出来ると思う、私に出来ることがあったら何でも協力するよ!」
屈託無く笑顔を見せる高町なのは。
それを見て、八神はやては次の話題を進める。
「実はな、その先も考えとるんよ。部隊を作って、下地を整える。そして足元を固めていって、いずれは・・・管理局そのものを私が動かしたい。今の間違った部分を全部直して、新しい管理局に生まれ変わらせる。それが最終目標や」
高町なのはの両目をまっすぐ見つめながら言い放った。
平常時であれば性質の悪い冗談で済むが、八神はやての瞳は本気だった。
「はやてちゃん、本気・・・なんだね」
高町なのはが大きく息を吐き出しながら答えた。
「そうや、ここになのはちゃんだけ呼んだのも、この事を伝えたかったから。
フェイトちゃんは真面目やし、お兄さんやお母さんが管理局の要職・・・ちょっと話せないからね・・・」
八神はやてが紅茶を口に含ませて乾いた喉を潤す。

これは賭けだった。
しかし分の悪い賭けではないはず、そう信じていた。

「なのはちゃんに、私の本当の目標に手を貸してもらえたらなー、って思うとるんよ。ちょっと無茶な事もしなくちゃいけない事があるかもしれん、そんな時になのはちゃんの圧倒的な戦闘能力が必要になることもあるはずだから・・・」

勘のいい高町なのはは会話の流れから、八神はやての伝えたい事を既に理解していた。
八神はやてはどんな手段を使っても目標を達成しようとしている。
「でも、やっぱりそういうのは良くないよ。目標を作るのは良いけど、そんなに無茶な事をしてまでなんて・・・」
高町なのはは親友が道を外れる事を放っておけるはずもない。何とか上手く説得しようと試みていた。
しかし、八神はやての口から出た言葉を聞いてそんな思いは掻き消される。
「フェイトちゃん、最近なのはちゃんにベッタリじゃなくなってきたよね。
養子の子供を引き取って可愛がってるって話だけど・・・。なのはちゃん、知っとった?」
八神はやての口から漏れ出した言葉により高町なのはの思考が停止。

高町なのはの抱える心の闇に八神はやての投げかけた言葉の矢が突き刺さった。
「なぁ、なのはちゃん、もう一度フェイトちゃんと昔みたく2人きりで仲良くしたいんやろ?私が協力しても良いよ・・・。その代わり、なのはちゃんも私の夢に協力して欲しいな」

高町なのはの表情が先程まで浮かべていた笑顔から、まっさらな無表情に変質する。
「そう、そうだよ。フェイトちゃんと小学生の時みたいに2人きりで仲良くしたいの。だってフェイトちゃんは私のモノ、私はフェイトちゃんのモノだから。2人でずっとずっと仲良くしたいのに・・・。フェイトちゃんは優しすぎるから、他の人まで見ちゃうの。私だけ見てくれれば良いのに・・・」
井戸の底から響いてくるような低い声が高町なのはの口から溢れ出た。
八神はやては狂い始めた親友の姿に背筋を冷やしながら口を開く。
「それじゃあ、私が協力してあげる。フェイトちゃんと仲良くできるように色々な事に協力してあげる。だから、なのはちゃんも私の夢に協力して・・・な?」
全てを見透かした言葉。
高町なのはは混濁した瞳をぎらつかせて答える。
「良いよ。はやてちゃんに協力してあげる。一生懸命頑張ろうよ、みんなが幸せになれるようにね。ふふ、きっと楽しいよ」
八神はやては賭けに勝った。
勝率は最初から9割を超えていたが、勝つべくして勝つ賭けだった。
「契約成立やね。
でも最後にこれだけは約束して欲しいんやけど、私の家族に手を出すのだけは無しや。
もし、私の家族に手を出したら・・・容赦しない」
強い意思を携えて高町なのはに言う。
既に正気を失っているであろう高町なのはが虚ろな表情で言葉を返す。
「分かったよ。正直ヴィータちゃんは凄く可愛いから狙ってたんだけど、我慢してあげる。その代わり、はやてちゃんもフェイトちゃんに手を出しちゃ、駄目だよ」
2人の口から自然と笑いが零れる。
どこか壊れた楽器を想起させるような笑い声、常人が聞いたら不協和音にしか聞こえない。
「じゃあ、約束や」
八神はやてが右手の小指を差し出す。
「約束・・・なの」
高町なのはも右手の小指を差し出す。

互いの小指が絡み合い指切りをした。
幸せを求める2人の少女が秘密の約束を果たす。

近い将来訪れる幸福を信じて。



(完)


2008年1月5日 完成
HP:珈琲みるく症候群 
作者:梅入

テーマ:魔法少女リリカルなのはStrikerS - ジャンル:アニメ・コミック

自作小説 | 14:44:39 | Comments(6)
コメント
遅くなりましたが
全部読ませていただきました
お世辞とか抜きに面白かったです
正統派少年漫画みたいなノリですね

ただヤンデレ風味が少なかったので、
その筋の方は満足出来ないのかもしれないですねぇ
2008-01-12 土 01:39:13 | URL | なおあき [編集]
次回は震えるぞヤンデレ、燃え尽きるほどニート
>なおあきお兄ちゃまへ

ご感想ありがとうございます。

少年漫画っぽいかどうか自分でも図りかねる内容なんだけど、今回のは。
世界名作劇場+悲劇モノ。たぶん。

ヤンデレ味は薄いというか多分ほぼ無い、という内容なので確かにヤンデレでしか勃起できないよぅという方には物足りないだろうなぁとは自分でも思ってましたが、この続きの次回作がヤンデレ濃度が高いのでその前フリだと思ってもらえればなぁ、とか勝手に思ってます。

まぁヤンデレが無いからって内容が明るいかと言われるとまったくもって暗いわけですが。私がヤンデレも好きだけど、その根本は薄幸物語が好きというその辺の違いがこのお話にはあるかも。大は小をかねる的な。


今回感想があんまり入らないから、内容的にコメントしづらいのかなぁとか思ってたけど一件もらえたから安心しました。これで夜の営みにも性が出ます(精液的な意味で)

という事で、この続きも書いてるからその内またうpします。
2008-01-12 土 15:31:55 | URL | 入 [編集]
こんにちは。
読ませていただきました!非常におもしろかったです。

続きがものすごく気になるので是非拝見してみたいです!

良い時間をありがとう。
2008-10-08 水 13:23:29 | URL | yuui [編集]
>yuuiさん

こちらこそありがとうございます!!
見つけてくれてありがとう!!と言わせて下さい。

返信が遅れて申し訳ありませんでした。
今週はちょっと仕事の方が立て込んでしまって帰宅できなかったので・・・。

本作、というかリリカル二次創作小説の続編ですが、
今、すっかりべびプリで手一杯になっちゃってたのをスケジュール調整して、続編を書き進めております。
決して忘れてるわけではなく、ちゃんと最後の最後まで話の筋は考えてあります。

次ははやて&ヴィータVSなのはさんのお話になります。
今回読んで頂いた話がプロローグみたいなものにあたります。

リリカルで全然描写されていない、はやてちゃんの強さを出してみたくて書いてます。手加減無し、リミッターなし、手段も選ばないならはやてちゃんもなのはさんばりに強いはず、という妄想に基づいて書きます。
あと、ヴィータちゃんの幸薄い所が書きたいんで。

連作の最後の最後はちゃんとなのはさんとフェイトちゃんが幸せになって終わる予定です。幸せの定義がアレかもしれませんけど。

なんとかかんとか、年内中にはこの続きを書いて、来年には最終章みたいなのを書けるように頑張ります。
それまでちょっとだけお時間を下さい。

一番好きな第一期が劇場版になるってことで、モチベーションも上がりまくりなんで、頑張りたいです。

それでは、こちらこそありがとうございました。嬉しいです。
2008-10-12 日 02:30:48 | URL | 入 [編集]
ほんとに偶然見つけたんですがお陰さまでとても有意義な時間になりました。

コメントの返信どうもありがとうございます!

色々とお忙しいかと思いますが執筆がんばってください!他の作品も読ませていただきましたー

続きがあるとのことなので楽しみに待たせてもらいます^^
2008-10-19 日 08:35:49 | URL | yuui [編集]
>yuuiさん

度々ありがとうございます。
早いところ続きを書いて完成させたいです。

他のも読んでもらったとのことで、ありがとうございます。

大体あんな感じの作風です。書く物ほとんど。
性癖の関係上、幸薄い子が大好きなんでリリカルはそういう観点からも
めちゃくちゃ大好きなのです。
ヴィータさんの健気っぷりは最高に可愛いと思います。

という事で、ちょっと続きはお待ちいただければと・・・。
足掛け一年ぐらい掛かっちゃってますけど。
2008-10-19 日 22:07:18 | URL | 入 [編集]
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