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「魔法少女リリカルなのは」二次創作小説 『夢幻泡影の姉妹』前編
やっと書き終えました。

今回ちょっと分量多くて、重くなったので、

前編後編に分けさせていただきました。


フェイトさんメインの二次創作小説です。
というかアリシアさんもメインです。
姉妹です。

原作でほとんど出番が無いけど、凄く美味しい立ち位置にいるアリシアを放っておけなくて、その上でフェイトさんも薄幸で可愛いからなんというか我慢できずに衝動の赴くままに書いてみました。

白いのも出てきます。


ただ、私が書くだけあって、
フェイトさん以外の登場人物はほとんどヤンデレです。

病んでるキャラが好きな人は楽しめるかと思います。
そうじゃない人は生暖かい目で目守ってあげて下さい。


例によって妄想設定、妄想魔法てんこ盛りの内容です。
しかも前回書いたヴィータさん小説の後の話になってます。


それとオフィシャルの時代設定とかなるべく調べたつもりですが、公式で出てる情報と差異があったらすいません。
一応A'SとStrikerSの間の中学生の設定です。
生暖かく見守ってあげて下さい。


あと今回、後編に入ってるエピローグ少し長いです。すいません。
別作品にして収録しようかと最後まで悩んだけど一個にしました。

えーと、「後味の良い終わり」が好きな方は『余話』を読まない方が良いかも知れません。

そんなんどっちでもイケルよ!と言う人は『余話』までイッチャウのも平気かもです。

誤字脱字等あったらちょこちょこ直していきたいと思います。
直したつもりでもきっと沢山あるんだろうなぁ。


で、一応原作知らない方のために、
ウィキペディアのリリカルなのは情報はこちらです。

今だったらニコニコ動画とかでも色々出てるからそっち見るのもアリかもしれません。


感想等ありましたら、コメントで頂ければ幸いです。

ここにあるのは前編で
ちなみに後編はこちらです。

という事で、
「続きを読む」で全文表示です。



「魔法少女リリカルなのは」二次創作小説 『夢幻泡影の姉妹』 前編


炎天下の中、プール脇の更衣室で湿った空気を吸い込みながら、フェイトは思う。
これはきっと何かの間違いで、偶然なのだと。
フェイトは自分のロッカーの内部を何度も確認する。
既にプールの授業は終了し、他のクラスメイトは全員が教室に戻っていた。フェイトだけが最後まで更衣室に取り残されて探し物をしていた。
幸い、今日は体育の授業後は昼休みなので次の授業に遅れる心配は無い。

「―――でも、早く戻らないとなのはやはやてに心配をかけてしまう」
急がなければならない事に変わりはなかった。

下着が無くなっていた。
更衣室のロッカーにしまっていたはずの下着だけが消えていた。制服や財布はそのままなのに、下着だけが見付からなかった。他のクラスメイト達にはそんな事は無かったようでフェイトだけが被害者という事になる。

「どうして・・・」
フェイトの呟きに応える者はなく、ただ蝉の鳴き声だけが更衣室の中で反響していた。
時計を見る。既に昼休みが始まってから15分以上が経過していた。

「―――これ以上はなのは達を待たせる訳にはいかない・・・」

フェイトは意を決して制服だけを身に付けて更衣室を出て行くことにする。
湿った肌にブラウスが吸い付き、フェイトの艶かしい肉体を否応無く映し出す。
下半身は短いスカートだけ、あまりの無防備さに足を動かす事も躊躇われた。

「―――教室に行けば、普段の体育授業で着替えるよう用意してあるスパッツがある。それを身に付ければ良い」
フェイトは一直線に高町なのは達が待っているであろう食堂に向かった。
すれ違う者からの視線を浴びて肌は上気し、赤く染まる。
透けてしまっている胸を両手で隠しながらフェイトは走った。
フェイトはその羞恥心よりも高町なのは達との時間を守る。
それはとても大切な時間だった。


「・・・あ!!フェイトちゃん。どうしたの?今日は随分遅いよ」
いつもの集合時間を遅れて来たフェイトに高町なのはが普段通り、自分の隣の席を空けて待ってくれていた。
それだけでフェイトは嬉しくて堪らなかった。
「今日は、少しクラスの委員会の手伝いをしていたから・・・ごめんなさい」
フェイトは高町なのはに対して嘘を付く行為に後ろめたさを感じながらも答えた。
その答えに高町なのはは少し寂しい顔で言う。
「・・・そうなんだ、フェイトちゃんは真面目だからクラス委員にも頼りにされちゃうのかな」
その言葉に曖昧な笑みを浮かべて返すフェイト。

中学2年生になってから、高町なのはと八神はやては同じクラスとなりフェイトだけが別のクラスになってしまった。
1年生の時は3人共同じクラスになり、楽しい思い出も沢山出来た素晴らしい1年間だった。
2年生で別々のクラスになっても、こうして昼休みは一緒に昼食をとってくれる。困った事があったら直ぐに教室まで来てくれる。そんな優しさがフェイトは心から嬉しく、友達が居る事のありがたさを実感していた。


フェイトは食堂で購入してきたキツネうどんをテーブルに置き、高町なのはの隣に座る。
すると目の前にはもう一人の友達、八神はやての姿が目に映る。
「フェイトちゃん、なんや顔が真っ赤になってるけどどうかしたん?」
目ざとい。フェイトは八神はやての観察力の高さを身をもって味わった。
「ま、前の授業がプールだったんだ。だから、日に焼けちゃったんだと思う。心配ないよ」
両手をしどろもどろに交差させながら言い訳をするフェイトを八神はやては見つめていたが、それ以上問い質す事もなく言う。
「ふーん、それじゃあ今度からはちゃんとUVケアせなあかんよ。フェイトちゃんは折角綺麗な白い艶々のお肌なんやし」
「そ、そうするよ。肌は大切にしないといけないからね」
なんとか誤魔化せた事にフェイトは安堵の息を付いた。
その後は、他愛も無い授業の話や夏休み前の期末テストが大変だとか、そんな話をしていたらあっという間に昼休みの時間が終わりそうになっていた。
フェイトは自分の現在の状況を思い出す―――下着も身に付けていないのだ。
急いで教室に戻り、下着代わりのスパッツを履かなければならない。
フェイトは音を立てて椅子から立ち上がる。
「わ、私・・・用事があるから行くね。また放課後」
そう言い残し、フェイトは食堂を足早に後にした。
振り返りもせず去っていく後姿を高町なのはと八神はやては心配そうに見つめていた。


フェイトは脳裏で何度も「ごめんなさい」と高町なのはに謝っていた。逃げるように立ち去ってしまった事が申し訳なかった。
やがて自分の教室が見えた。
急ぎ足で自席に向かい、引っ掛けてある着替え鞄からスパッツを取り出そうとした。

無い。
鞄の中は、荒らされていた。
そしてスパッツが無くなっていた。
フェイトの顔が羞恥の赤色から、恐怖の青色にサッと変化する。

鞄の中身を何度も見返しながらオロオロしているフェイトにクラスの女子生徒が声を掛ける。
「どうしたの?フェイトちゃん」
フェイトは真っ青な顔色で答える。
「私の・・・下着が、見付からなくて・・・」
それを聞いた女子生徒は嘲笑うかのように鼻から空気を漏らす。
「本当に?じゃあフェイトちゃん、ひょっとして今パンツもブラも身に付けてないって事?すごーい!」
その声に引き寄せられたかのように、フェイトの周囲にクラスメイトが集まって輪を作っていた。
一様に下卑た薄笑いを浮かべている。
困り果てたフェイトを動物園の檻の中を見るような目で眺めて楽しんでいる。
周囲を囲む者から発される嘲笑を込めた声がフェイトを襲う。
「フェイトちゃん、ただでさえその大きいオッパイで十分エッチなのに露出サービスまで始めちゃったの?」
「変態だよねー」
「教師相手に色目でも使ってるんじゃないの?」
無数の言葉がフェイトの心を抉る刃となって突き刺さる。
フェイトの顔が羞恥で真っ赤に染め上げられた。

突然、数人の生徒がフェイトを羽交い絞めにした。
「下着を着けないなんてエッチなのは、校則違反なんだよ。私達が検査してあげる」
女子生徒の手がフェイトのブラウスを掴む。
「いやぁ!・・・やめて!」
悲鳴を掻き消すかのように、ブラウスがボタンを弾けさせながら破られた。
フェイトの白い肌と大きく育った双丘が晒される。
「うわぁ、やっぱりフェイトちゃんの身体、すっごいエロイね。オッパイとか凄すぎ。育ち過ぎだよ、これ」
羽交い絞めにしていた女子生徒が力を込め、フェイトを腹ばいで床に押し付ける。リノリウムの冷たさを押し潰された胸で感じながら抵抗しようとするフェイト、その頭を思い切り踏みつけて女子生徒の一人は言う。
「あの噂本当なのかな、高町なのはとデキてるって。なのはさん可哀想、こんな根暗な奴に付きまとわれるなんてねー」
その言葉がフェイトを深く切り裂く。
フェイトは必死で瞼に溜まった涙を堪えるので精一杯だった。

クラスメイトの全員が犯人で、被害者はフェイトだけ。それがこのクラスの現状だった。

すると教室の後方に居た生徒が演技地味た声をあげる。
「あれー?フェイトちゃんの下着ってこれじゃないのかなー?」
その生徒はまるで汚物を掴むような仕草で割り箸を使ってゴミ箱から何かを取り出した。
ケチャップやマスタード、他人の残した残飯に塗れて汚されている無くした筈のフェイトのショーツだった。
それを見てフェイトは周囲の人垣をかき分けてゴミ箱に向かう。
羽交い絞めにしていた生徒も頭を踏みつけていた生徒もそれを邪魔しない。投げられた棒に飛びつく飼い犬を眺めるようにフェイトを見ていた。

燃えるゴミの中にはブラジャーも入っていた。こちらは鋏か何かでズタズタに切り裂かれて無残な状態だった。
燃えないゴミの中からは空き缶と一緒になってスパッツが見付かる。他人の飲み残しを散々吸い込んだスパッツは異臭を放っていた。

「ひ、酷いよ・・・どうしてこんなこと・・・」
フェイトは膝を着いてその場にへたり込んだ。
その周囲を再びクラスメイト全員が囲む。

「見付かって良かったねー、フェイトちゃん。誰かがゴミだと思って捨てちゃったのかな?」
「でもそんなに汚れてる下着じゃもうダメだね、今日は一日ノーパンノーブラだ!」
「帰る時もパンツ履いて無いんだから階段とか気をつけた方がいいよ、みんなに見られちゃうよ!」
「まぁフェイトちゃんはエッチな子だから、それが本望なのかもしれないけどさ!」
「帰りに変な男にレイプされないように気をつけて帰ってね♪」
「だからぁ、フェイトちゃんはそういうのが好きなんだってば!」
「それじゃ変態じゃない!フェイトちゃん、変態だよ!」
「案外これも自作自演なんじゃないの?そういうプレイなんだよ、コレ」

「うわぁ、キモイ。死ねばいいのに」

ひとしきり言葉の刃でフェイトを切り刻むとクラスメイト全員が何事も無かったように席に戻った。
いつの間にか昼休みも終わる時間だった。午後の授業が始まる。

しかしフェイトはゴミ箱の前で膝を着いたまま立つ事も出来ずにその場から動けなかった。

涙の水滴が点々と床に零れ落ちる。
感情を抑えきれなくなったフェイトは声を押し殺して小さな声で泣いた。
その泣き声を掻き消すように昼休み終了のチャイムが学校中に鳴り響いていた。




フェイトはその後、学校内にある購買部で代わりのスパッツやブラウス等を購入して過ごした。昼休みを過ぎた頃に衣服を買い求めるフェイトに販売員は不信感を含む目を向けていた。

一週間前から始まったフェイトへの苛めは今日も続いていた。
どうして苛められる様な事になったのか、フェイト自身にはまったく分からなかった。
被害者には理由など分からないものなのかもしれない、ほんの少しでも他人と違っていれば排斥と嘲笑の対象にされてしまう事もある。
それが苛めなんだろうな、とフェイトは思う。

高町なのはや、八神はやてには今日まで言い出せずに居た。
二人には心配をかけたくなかった。自分が我慢していればいつもと変わらない日常が続けられると信じて今日も恥辱に耐えていた。
これは幼少時からのフェイトの悪い癖だった。我慢強く、他人の気持ちを優先し過ぎて自らの心を押し潰す。今は亡き母親との関係性から生まれてしまったこの自己犠牲癖とも言える性格は中学生になった今もフェイトを蝕んでいた。
当然ながら、いずれ限界が来てしまう。
フェイトの心が限界に達して壊れてしまえば、結局高町なのはに迷惑をかけてしまう。フェイト自身この事には気付いていた。
そうなる前に高町なのはに相談しようか・・・。と思える程にはフェイトも成長していた。
「なのはに相談してみよう・・・。私一人じゃあ何も出来ない」


放課後、二人の教室を訪れると今日は高町なのはも八神はやても学校の委員会で遅くなるということだった。
一人で帰るのも久しぶりだった。それがフェイトの陰鬱な気持ちに拍車をかけてしまう。
その代わり、今夜は高町なのはの実家でもある喫茶店「翠屋」の新作ケーキを二人で食べるという約束を交わして分かれていた。

「・・・その時、なのはに相談しよう」
フェイトにとって相談できる友達を持てた事がこの世界に来てからの何よりも幸福な事だった。



帰宅するために下駄箱に辿り着いたフェイトは靴箱を開けると中に手紙が入っていた。
ひょっとしたら誰かが苛めの道具として入れたのかもしれない、否応なく警戒してしまう。
戦々恐々の面持ちで手紙を手に取ったフェイトは差出人の名前を見て全身が凍ったように動きを止めた。

「アリシアお姉ちゃんより」

フェイトの脳裏に5年前の光景が閃光のように蘇る。
最後まで自分を娘と認めてくれなかった母、一度も「愛している」と言ってくれなかった。
カプセルに入っていた自分のクローン元であり、母の真の娘であるアリシア・・・の遺体。
そして二人が次元の狭間へと落下する姿。それが最後の別れ。

フェイトは一部始終を全て見ていた。
助ける事が出来なかった事は今も後悔している。辛く苦しい記憶。
フェイトは震える手で手紙を開封する。
封筒の中には一枚の便箋と写真が入っていた。

『可愛い妹のフェイトちゃんへ
お姉ちゃん、フェイトちゃんに会いたくて会いたくて我慢できなくなったから来たよ。
たくさんお話したいことがあるから、今すぐ会おうよ。
懐かしい写真も同封したから見てね♪
お姉ちゃんより』


フェイトの心臓が早鐘のように鳴り響き、嫌な汗が全身を伝う。
死んでいたはずであり、その死体すらも次元の狭間に消えていったはずのアリシアからの手紙。あまりにも不可解なメッセージだった。
悪戯にしては細か過ぎる、そもそもフェイトの本当の家庭環境を知っている人間は極少数に限られる。

フェイトは添付されていた写真を手に取って見て、更に驚いた。
その写真は子供の頃、自分と母親が写っている写真だと思い大事にしていた、アリシアと母親の写真だった。
今も大切にしまっているが、その写真がどうしてこんな所にあるのかまったく理解できなかった。


頭の中が混乱しているフェイトの身体が突然光に包まれる。
「強制転移魔法?手紙がキーになっていて発動した?」
直後に眩い光がフェイトの姿を掻き消した。
下駄箱にはフェイトの鞄だけが残されていた。




瞬間的な意識の空白。
フェイトは気がつくと、再び同じ場所に立っていた。
学校の下駄箱、先程まで自分が居た場所とまったく同じだった。
しかし、瞬時に異常に気がつく。
周囲からは放課後の喧騒が一切聞こえない。練習に励む様々な運動部のかけ声も吹奏楽部の美しい音色も聞こえない、無垢なる静寂だけが支配している世界だった。

魔導士としての直感。ここは別の空間、現実世界とは切り離された封鎖領域に転移させられた。
先程まで自分の足元にあった鞄だけが消えていることが何よりの証拠だった。

自分が攻撃を受けている、フェイトは最大限の警戒心を持って周囲に探査魔法を張り巡らせた。
―――魔力を発する場所を特定、自分の教室がある辺りから僅かな魔力を感じ取った。
敵の罠かもしれないが、どの道脱出するには敵を倒す他ない、それにアリシアの名前を使っている敵の正体も気になっていた。
ほんの三十分前まで最悪な気分で一日を過ごしていた教室へとフェイトは戻った。
ここに至るまで一切攻撃は受けていない―――敵の誘い。

扉の前まで辿りついたフェイトはいつでも反撃できるよう心構えを整えてから一息に扉を開けた。


「いらっしゃい!フェイトちゃん!」

中から大きな声で返事をする者の存在。

フェイトと同じプラチナブロンドをツインテールに結んだ少女。
顔立ちもフェイトの幼い頃と何一つ変わらない。
緑色のリボンと白のワンピースが少女らしい可憐な姿を際立たせていた。
それはまるで森の妖精を思わせるいで立ち。

アリシア・テスタロッサ。

クローン体であるフェイトの元となるオリジナルの存在。

「こうして会うのは初めて・・・だよね」
教卓の上に腰掛けるアリシアは微笑を浮かべてフェイトを見つめる。
フェイトは培養槽の中で保存された遺体としてしか見たことの無いアリシアが目の前に居る事に驚きを隠せない。
「どうして、アリシアが・・・。母さんと一緒に次元の狭間に落ちていったはずなのに」
アリシアは教卓から降り立ち、自慢げに言い放つ。
「実はね、私はあの培養槽の中に居た時点で意識はあったんだよ。ジュエルシードを母さんが発動させた時にその魔力を少し貰ったせいかもしれないけど、とにかく意識は目覚めていたんだ」
アリシアはフェイトの傍に歩み寄る。
フェイトの双眸には昔の自分が映っていた。

「その後、確かに私は次元の狭間に落ちたよ。でもね、あの時母さんが遺してくれたジュエルシードは魔力を残した状態だった。正直なところ私も詳しい事は憶えていないけど、とにかく『死にたくない!』って思ったらジュエルシードが爆発したみたいに光って、気がついたら私は幻の地、アルハザードに着いていた・・・」

フェイトは思い出した、母親は次元の狭間のどこかに幻の都市アルハザードの入り口があるはずだと言っていた。アリシアはその入り口に辿り着いたということ・・・?

「私はそこで身体を治してもらったの。流石は幻の超古代文明、魔法の技術も現代よりも遥かに進んでいて私の体もこうやってすっかり元気になれたんだよ」
得意満面に説明を続けるアリシアを見ると確かに健康体そのものだった。
とても死体のまま長い間培養槽で保存されていたとは思えない程だった。

「アルハザードはね、とっても良い所だったよ。みんな親切で優しいし。誰もが楽しく暮らせる凄く良い所なの。貧富の差はないし衣食住も心配することの無い世界。私はたまに魔術の実験を手伝うだけで生活できるんだぁ」

フェイトはアリシアの説明を聞いて事情を幾らか理解してきた。
死んでいたと思っていた自分の家族が生き残っていたという事実は嬉しい気持ちもあったが、今の状況を考えるとまだ疑念を捨て去る事ができない。
その思いをフェイトは口にする。

「それじゃあ、アリシアはあの事件の後生き返った、て事だよね。直ぐには無理かもしれないけど、あれからもう5年以上経ってる。もっと早く連絡してくれれば良かったのに・・・。
それに、何で私をこんな封鎖領域に閉じ込めたりするの?」

疑問をぶつけてくるフェイトにアリシアは不敵な微笑を浮かべ、指を一本立ててから教師のような声音で答える。
「一つずつ答えてあげるね。
私が生き返ったのは正確には2年前。次元の狭間での時間経過は現実世界とは違うからそんな時間差が生まれたみたい。私もフェイトちゃんに連絡したかったけど、フェイトちゃんがどこに居るのか分からなかったから探すだけで1年掛かっちゃったんだよ」

指をもう一本立ててから続ける。
「そして2つ目の質問の答え。
今から1年ぐらい前にやっと地球に居るフェイトちゃんを見つけたのは良かったけど、大変な事実に気がついたの。

フェイトちゃんの傍にいつも居る、なのはちゃん。
母さんを殺して、私を次元の狭間に落としてくれた人間。
あの子さえ居なければ全部上手くいってたはずだったのに。

フェイトちゃんはその母さんの仇であるなのはちゃんと仲良くしてた。
私はその様子をアルハザードからずっと見てたよ。『嘘だ』って思いながら。
1年間ずっと見てたんだよ。
でもフェイトちゃんは本気でなのはちゃんの事が好き・・・なんだよね」


アリシアはもの悲しい目を浮べながら歩を進める。
フェイトの胸に顔を埋め、両手で括れた腰に抱きつきながら言う。

「だからね、フェイトちゃんを取り戻しに来たんだよ。もう一人は嫌なの」

上目遣いでフェイトの顔を見つめながらアリシアは言う。
「一緒に帰ろう、フェイトちゃん・・・アルハザードに。
あそこの技術ならきっと母さんも生き返らせられるよ。私の体はもう手術の後遺症でダメみたいだけど、フェイトちゃんの身体を使えばきっと母さんも生き返るよ。そしたらリニスだってきっと生き返らせられる、アルフももちろん一緒に連れて行こう。
私が生きていれば母さんだって昔みたいに優しさを取り戻しているはずだよ。
だから、私と一緒に行こう。ね?」

アリシアのもたらす情報は全て甘美な響きを持ってフェイトに伝わった。
9歳の頃に憧れていた暖かい家庭、それが手に入るかもしれない。
だが、今のフェイトは高町なのはと言う友人を得て、甘い誘惑に抗う精神力を身に付けていた。

フェイトは視線を正してアリシアに向ける。
「アリシアが生きていた事は、私も嬉しいよ。これから一緒に家族になりたい気持ちもある。
でも、どうしてこんな所に私を連れ込んで言う必要があるの?
他の人には何か言えない秘密があるから?
アリシアの事、私はなのは達にも教えてあげたい、きっと喜ぶはずだよ」

それまで、視線を逸らさずフェイトと向き合っていたアリシアが俯いた。
抱きついていたフェイトから一歩、二歩と下がり距離を置く。

アリシアの薄い笑い声が空虚を孕んで教室に広がる。
「それだよ、フェイトちゃん。ソレが駄目なんだよ!」
アリシアの右手が号令をかけるかの如く上げられる。

その瞬間、それまで存在しなかった気配が教室を埋め尽くす。
刹那の間を置いて虚空から現れたのはフェイトのクラスメイト達だった。

「フェイトちゃん、お姉ちゃんは凄く悲しいんだよ。
高町なのはを深く刻み込まれちゃったんだね・・・可哀想。お姉ちゃんがその呪縛を解いてあげる。この世界には何の未練も無くなる様にしてあげる!
そうすれば、私と一緒に来てくれるよね♪」

クラスメイト達は全員虚ろな目を浮べ、包丁やカッター、バット、コンパス・・・学校に置いてあるであろう凶器となり得る得物をそれぞれ手に持っていた。

アリシアの足元にクラスメイトの一人が土下座のように頭を垂れる。
その頭を踵で踏みつけながら笑みを浮かべてアリシアは言う。

「一週間、どうだった?辛くて痛くて悲しくて嫌だったでしょ?学校にはもう嫌気がさしてるよね。
フェイトちゃんが我慢できなくて泣いちゃう姿を見てると私も心苦しかったよ」

アリシアの言葉にフェイトの身体が固まる。
覚束ない声でアリシアを問い詰める。

「私が苛められてた事に、アリシアは関係してるの?どうして、あんな酷い事を!」

うろたえるフェイトを見て、アリシアは少女らしからぬ艶やかな声で返す。
「私の魔法でこいつらの本音を少し強調してあげただけに過ぎないんだけど、あんなに見事にフェイトちゃんを苛めてくれるとは思わなかったんだよ。フェイトちゃんのオッパイは多感な時期の女の子達にとっては憧れと嫉妬の的らしいね。
それと、どうしてこんな酷い事したのかって?
さっきも言ったよね。
この世界のことを綺麗さっぱり全部忘れてフェイトちゃんが私と一緒に来れるようにしてあげるためだよ。私が魔法を使わなくてもいずれフェイトちゃんは同じような苛めにあってたと思うよ。そのぐらい、こいつらの心はフェイトちゃんを妬んでいたもの。
私は少しそれを早送りしただけに過ぎないよ」

フェイトは眩暈で倒れそうになる。傍の机に手を付いてなんとか姿勢を保ち続けた。
「そんな・・・そんな事のためにみんなを操って、私を苛めていたの?」

「そうだよ、フェイトちゃんのためを思って私は心を鬼にしてるんだからね。こんな汚い嘘の世界は忘れて、私と一緒に行こう。母さんやリニスも居る家族の所へ」
アリシアはフェイトに向けて小さな右手を差し出す。


数瞬の沈黙をおいてからフェイトが透き通った声を発する。
「嫌だよ。
私はこの世界が好き、なのはが好き、仲間が好き。
傷ついた事もあったけどそれを乗り越えて手に入れてきた私の大切な宝物が詰まった世界。
だから、捨てられない。
アリシア、お願いだからもう酷い事は止めて。今だったら私がなんとかしてあげられる。
このままじゃ管理局に捕まっちゃうんだよ。魔法の事を知らない民間人に危害を加えるのは重罪にな―――」

フェイトの声を遮るように、大きな打撃音と破砕音が教室に響く。
アリシアが踏みつけていた生徒の顔面をサッカーボールのように蹴り飛ばしていた。フェイトの近くの机や椅子を巻き込んで吹き飛ばされた生徒は鼻骨を陥没させて白目を剥いたまま昏倒している。


アリシアは少女の喉から発せられるものとは思えない重量感のある声で言う。
「少し、お仕置きが必要みたいだね。
聞き分けの無い妹を躾けるのも姉の役目・・・かな」

その声を皮切りに教室に居た30人もの生徒がそれぞれの武器を持ってフェイトに飛び掛った。

フェイトの顔面目掛けて逆手に持った鋏を振り下ろす生徒=昼休みにフェイトを嘲笑した生徒。
咄嗟に身を引いてかわすフェイト。
しかし右手からは消火器を全力で叩きつけようとする生徒=フェイトの下着をゴミ箱から箸で摘み、晒し者にした生徒。
横殴りに叩きつけられる消火器を膝を深く沈め、低い姿勢となって避ける。

次々に迫る攻撃をかわし続けるフェイト。金糸を思わせる髪が空中を舞う。
「もうやめて!アリシア、関係の無い人達を巻き込まないで!」

アリシアは子供のお遊戯を見に来た親のように椅子に座ってフェイトの舞を観覧している。
「ほら、フェイトちゃん余所見したら危ないよ。
そいつらを止めたかったら殺しちゃえば良いじゃない。フェイトちゃんだったらあっという間でしょ。お姉ちゃんが見ててあげるから、上手にやってごらん」

フェイトは奥歯を噛みしめる。
その時、腰だめに構えた包丁を突き込んでくる生徒=フェイトの頭を踏みつけて罵った生徒。
フェイトは高速の蹴りを相手の右手の甲に叩き込む。包丁が吹き飛び、教室の床に金属音を響かせた後、滑るように転がっていく。フェイトはそのまま鳩尾にボディーブローをねじ込む。横隔膜が伸縮して呼吸困難となった生徒は吐瀉物を撒き散らしながら昏倒する。
フェイトが拳を引く間に左右から挟み打ちの形でカッターを構える生徒と木刀を振り上げた生徒=フェイトを羽交い絞めにしてブラウスを引き千切った生徒。
右から振り下ろされる木刀を紙一重でかわしたフェイトはそのまま相手の喉に手刀を突き刺す。悲鳴を上げることも出来ずに倒れる生徒。
左から迫るカッターの刃をフェイトは相手の頭を越える程の跳躍でかわす。空中で一回転したフェイトはそのまま相手の首筋に鞭のような鋭い蹴りを打ちつける。生徒は白目を剥いてそのまま倒れ込む。

一度反撃を開始したフェイトは止まる事がなかった。
フェイトは向かってくる生徒を片っ端から戦闘不能にした。全員を徒手空拳だけでねじ伏せる力量。単体での高速魔術戦闘を得意とするフェイトにとっては1対多の状況は慣れたものだった。
ものの数分でクラスメイト全員が床に這い蹲って動けなくなる。


息一つ切らしていないフェイトは音も無く教室の中央に立つ。
未だに椅子に座り続けるアリシアに向けて願いを伝える。
「もう、いいでしょう。これで止めようアリシア。このまま私と一緒に管理局に行こう。まだ今なら私が上手く事を納めてあげられるから、お願い」

俯き加減だったアリシアが少しずつゆっくりと顔を上げ、氷細工で出来たような鋭く冷たい目でフェイトを突き刺すように見つめる。
その目を見てフェイトは全身に震えるような寒気が走った。

アリシアが暖かさを感じさせない冷え切った声で言う。
「一人も、死んでないね。
本当にフェイトちゃんは優しい子。そいつらは全員フェイトちゃんを苛め続けてきた連中なんだよ。今日だってあんなに酷い事されたばっかりなのに・・・。
フェイトちゃんの一番の長所は優しい所。お姉ちゃんもそれは分かってるよ。
でもね、時として長所は短所に繋がるの。こんなに汚い嘘の世界でも、フェイトちゃんは守ろうとするんだから」

小柄なアリシアは軽く飛び降りるように椅子から降りる。
「我侭な妹を手懐けるっていうのも、姉妹らしくていいかな・・・。
それじゃあ、フェイトちゃんが言う事を聞いてくれるまでお姉ちゃんが直接お仕置きしてあげるね」
アリシアの表情が蕩ける様な好色に染まる。それは少女が浮かべてはならないような淫靡な笑顔だった。
「初めての姉妹喧嘩だよ。ああ、良いよ。家族っぽくて良い。
フェイトちゃんは痛いのが好きなんだよね。毎晩、なのはちゃんに攻められて犯されてあんなにエッチな事してるんだもん。犯されてる時の顔、凄く可愛いんだよ。
今日はお姉ちゃんが一杯一杯してあげる。痛くて痛くて気持ち良くしてあげる。
フェイトちゃんが泣きながら『ごめんなさい』って言っても止めてあげないよ。だってその方がフェイトちゃんは嬉しいんだもんね」

フェイトの顔は羞恥で真っ赤に染まっていた。
夜の姿を見られていた。高町なのはの獣欲を毎晩全身で受け止めるフェイト。それはフェイトにとって最も大切で秘密の時間だった。
「見て、たの・・・?」

喜色満面のアリシアは答える。
「そうだよ!見てたよ!1年間ずっとずっと。朝も昼も夜もずっと!
毎日、なのはちゃんと一緒に楽しく過ごしてたね。
毎晩飽きる事も無く、日が昇るまで犯されちゃう日もあったよね!
それも全部忘れさせてあげる!
今日からフェイトちゃんを犯すのは私だけ!お姉ちゃんが信じられないぐらいに気持ち良くしてあげるからね!」
アリシアはそのまま高笑いを始める。

フェイトは未だに羞恥の気持ちが振り払えなかったが、そのアリシアの様子を見て驚愕する。
膨大な魔力がアリシアを中心に渦巻いていた。
夜闇を凝縮させたような、真っ黒な魔力が迸る。

『アリシアには魔術適正が無かった』
これは母親との事件後に確認した。
魔力プラントの事故に巻き込まれた際、魔法が使えず身を守る術もなくそのまま静かに永遠の眠りについた・・・はずだった。

だが、今目の前に居るアリシアからは高町なのはに匹敵するかのような魔力が溢れ出していた。
「これが私の得た力。
手術で身体が動かせるようになったのもこの力のおかげ。
お姉ちゃんの力を見せてあげる」
アリシアはいつの間にか手にしていたカッターナイフを右手に持っていた。

次の瞬間、フェイトは信じられないものを見た。
アリシアはそのカッターの刃を自分の血管が集まる左手首に押し当てて突き刺した。刃は1cm程めり込んでいたが、アリシアはそのまま刃を肘に向けて走らせた。肉を引き裂き、筋を切断して血管を破壊しながら幼く柔らかい腕に線を躊躇なく刻み付ける。
「んあぁ、・・・ひぃいああぁ!」
アリシアの自傷行為は自らの悲鳴と嬌声による混声合唱と共に続けられる。
刃が内肘まで到達した頃にはアリシアのワンピースの左半身は自身の血液で染まっていた。

黒。

アリシアの血液は黒かった。先ほど自身から溢れていた魔力と同じく黒く濁った色だった。
カッターナイフを引き抜いた左腕からは止まる事無く黒い血液が噴出していた。

一部始終をただ見ていたフェイトは声も出せないまま呆然と立ち尽くすしかなかった。
「本当はね、私もフェイトちゃんと同じで痛いの好きなんだ。これからは二人で痛い事し合おうね、きっと楽しくて気持ちいいよ!」
アリシアの足元に池を作る血溜まりからは強大な魔力が発されていた。
フェイトは声も出せないままアリシアの足元に広がる黒い液体を凝視する。
「これが私が生き返る事が出来た理由。
対都市殲滅戦用血液型デバイス。名前はこの世界の日本語で『是是非非』って言うみたい。
全身の血液をこのデバイスと交換して魔力を全身に流す事で身体を動かせるようになったの。それで魔法も使えるようになったんだよ」
話しながらアリシアはカッターを左手に持ち換える。
左腕に施した作業を右腕にも行う。
皮が破れ、肉が千切れる、繊維の繋がりがプチプチと音を立てて断たれていく。
「ひぁ、ん、はぁ、あっ!」
アリシアは甘い痛苦の声を喉から絞り出す。

溢れ出す血液が倍になり、見る見るうちに血液は教室の床に広がっていく。
アリシアの白いワンピースも今や自身の血液で漆黒に染め上げられていた。
黒い血液の臭いが教室に広がる。
人間の血液のような錆びた鉄の臭いではなく、甘い砂糖菓子の臭い。
その甘い臭いは呼吸するたびにフェイトの脳を直接犯すかのような濃厚な香り。


呼吸を乱して肩を揺らすアリシアは絶頂を迎えたような恍惚とした表情でフェイトに向き直る。
「これで、私の準備は出来たよ。フェイトちゃんも早く用意して、そのままバリアジャケットも無しじゃ、直ぐに壊れちゃうよ」

頭が痺れ、思考もままならないフェイトはそれでも辛うじて口を動かす事が出来た。
「駄目だよ、そんな事しちゃ駄目。アリシアは本当は優しい子なんでしょう。目を覚ましてよ」


アリシアは膝を震わせるフェイトを見て嘆息する。
「どうしたの、この位の事で怖がっちゃ駄目でしょう。これからもっともっと怖くて痛い目にあうんだから。
準備しないなら、もうこのまま始めちゃうよ」


アリシアの足元に溜まった血液が生物のように蠢いたかと思うと、そこから無数に鞭のような触手が吐き出される。
机と椅子を弾き飛ばし、教室を埋め尽すほどに大量の触手が粘液を迸らせながらフェイトを蹂躙するために襲い掛かる。

呆然としていたフェイトの目が一瞬で覚める。
右手でシールドの魔術を展開。円形の魔法陣が盾となってフェイトの眼前に現れる。
そこに無数の触手が激突する。
高速走行する10tトラックを受け止めたかのような圧倒的な衝撃がフェイトの右手から全身に伝わり、そのままシールドごと背後の黒板に叩きつけられる。
轟音と共に黒板が崩れ落ち、天井が崩落した。瓦礫と土煙でフェイトの姿が消える。

アリシアが笑顔で心配そうに言う。
「アレ?もう終わっちゃった?ちょっと不意打ちっぽくなっちゃったかなぁ。まぁいいや。
フェイトちゃ~ん、これからお姉ちゃんが触手を使ってフェイトちゃんの穴という穴を埋め尽くしてあげるよ~、出ておいでー。出てこないなら前戯も無しで今すぐ始めちゃうよ~」

返事は無い。立ち上る煙でフェイトの姿は見えない。
「じゃあ、決まり!今からフェイトちゃんを教室で滅茶苦茶に犯してあげる!いきなり全部の穴に突っ込んじゃうからね!」

再びアリシアの周囲から無数の触手が現れる。
そのどれもが先端は巨大な陰茎そのもの、亀頭の割れ目からは黒い粘液を滴らせている。
アリシアの腕よりも太い触手がまるで番の雌を見つけた獣のように汁を撒き散らしながらフェイトの元に踊りかかった。

しかし触手は一本足りとて、フェイトには届かなかった。
幾筋もの鋭い金色の光が立ち込める煙諸共触手を全て薙ぎ払う。
バラバラに刻まれた触手は床に落ちて、痙攣してから元の黒い血溜まりに戻った。
黒い血液の染みが散乱する中心には、バリアジャケットに身を包み金色の大鎌を構えるフェイトが居た。

フェイトは昔自分を助けてくれた高町なのはの用いる常套句を思い出していた。
「アリシア、どうしても止めてくれないなら力ずくでも止める。そして、私が勝ったらちゃんと話をしよう」

フェイトのバリアジャケットを見て、アリシアは笑顔で答える。
「いいよ、フェイトちゃん。やっと本気になってくれたね。
本気のフェイトちゃんをグチャグチャにしてあげるよ、そうすればお姉ちゃんがどの位強くて凄いのか分かるよね、なのはちゃんなんかよりずっとずっと凄い事してあげるからね!
お話もしてあげるよ、フェイトちゃんは鳴き声を上げてるだけかもしれないけどね!」

再び大量の触手がアリシアの周りから這い出る。
鎌首をもたげて獲物であるフェイト目掛けて狂ったように飛び込む。
フェイトは横に飛び、廊下へと脱出。それを追うように次々と教室から触手が湧いて出てきた。
迫り来る触手の壁にフェイトは鎌を横薙ぎに振り払う、同時に鎌の穂先から巨大な光刃が射出される。光刃は触手を切り刻みながら突き進み壁となった群に高速回転したままめり込んだ。
「セイバーブラスト!」
フェイトの声と同時、指令を受けた光刃は大量の触手を巻き込んで爆裂した。
激音が響き廊下の一部分が丸ごと全て崩落、外気が流れ込む。
触手は全て消し飛んだのか追撃は来ない。しかしフェイトは油断無く鎌を構えた。
その瞬間フェイトの右側にある、先程まで居た自分の教室ではなく、その隣の教室からアリシアが壁を突き破って飛び出す。アリシアは爆発に巻き込まれる寸前に壁を貫いて隣の教室に移動していた。
廊下に飛び出した勢いそのままにアリシアは奇襲攻撃に移る、フェイトの顔面に胴回し回転蹴りを繰り出す。
フェイトは咄嗟に右手でガード、しかしアリシアの外見からは想像する事など出来ない程の膂力で放たれた蹴りによりフェイトは廊下の突き当たりまで吹き飛ばされる。コンクリート壁には叩きつけられたフェイトを中心に蜘蛛の巣模様のひび割れが刻まれた。
右手に痺れが残ったままフェイトは立ち上がる。
「―――なんて力なの。ただの蹴りでバリアジャケットの装甲を貫いて衝撃を与えるなんて・・・」

そこに廊下をゆっくりと歩いてくるアリシア。相変わらず両手から黒い血液が止め処も無く溢れている。そして溢れ出た大量の血溜まりはアリシアの影のように付き従う。
「どう?全身に漲る魔力のおかげですっごく力持ちになったんだよ。女の子としてはあんまり自慢できないけど、フェイトちゃんを苛めるには丁度良いよね」
フェイトは素早く鎌を構える。不意打ちでもなければ挌闘戦となれば自分が有利になれる自信があった。
しかしそんな期待をアリシアは裏切る。
「でも、フェイトちゃんは素早くて捕まえられないからなぁ。まずはコレで動けないように足を潰しちゃおうかな」
そう言うとアリシアは右手の指を左腕の大きく切り開かれた傷口に刺し入れた。そのまま傷口を引っぱり大きく広げる。まるで口のように開かれた傷口から漏れ出してくるものがあった。
蛆虫。
アリシアの左腕から大量の黒い蛆虫が湧いて出てくる。あっという間にアリシアの左腕は蠢く蛆虫で覆われた。そして左腕の傷口をフェイトに向けてからより一層右手で大きく広げた。
「いくよ、いくよ、いくよいくよいくよ!!」
一瞬アリシアの傷口が収縮した後、アリシアの狂った叫びを掻き消す程に大きな破裂音が空気を震わせる。同時にアリシアの左腕の傷口が発射口となり、数え切れない程の蛆虫が全て弾丸となって発射された。

フェイトは間一髪廊下から続く階段へと飛び込んだ。回避仕切れなかった蛆虫の弾を受けてフェイトのマントが虫食いされたように穴が穿たれた。
一段下の踊り場に着地したフェイトに階上からアリシアの声が届く。
「よく避けられたね。少しぐらいは足に当たってくれると嬉しかったんだけど」
アリシアが階段に辿り着く、既に先程と同じく蛆虫の散弾を発射する姿勢。
フェイトは更に階下へと飛び込む。一瞬遅れて巨大風船の破裂音を思わせる轟音を伴い踊り場に蛆虫が撃ち込まれる。踊り場のコンクリート壁がまるでスポンジのように穴だらけになる。

階下のフェイトは苦痛に顔を歪める。
フェイトの白い太腿に弾痕。避け切れなかった蛆虫が一匹だけフェイトの白い太腿を汚すように撃ちこまれていた。フェイトの太腿の肉を食い破ろうとしているのか、蛆虫が肉の内側で蠢く。その度に激痛がフェイトを襲う。
ゆっくりと階段を下りる足音を響かせながらアリシアが言う。
「一匹入ったみたいだねー。どう、痛いでしょう。放って置くとそのままどんどんお肉の中まで入り込んでっちゃうんだよー」
アリシアの言うとおり、フェイトの太腿に入り込んだ蛆虫はどんどん奥まで侵入しようとしていた。
意を決したフェイトは大鎌の刃を自らの太腿にあて、蛆虫を自らの肉ごと抉り出した。
「あぁ、くぅ!」
痛苦の声を漏らしながらも蛆虫を摘出。太腿に赤い血液の筋が生まれる。
フェイトはなんとかバルディッシュを杖にして立ち上がる。
同時にアリシアがフェイトの視界に現れる。穴だらけになった階段の踊り場に立つアリシア、その両腕の傷口からは大量の蛆虫が湧き出ている。
「今度は外さないよ。しっかり味わえるように沢山詰め込んであげる♪」
アリシアが両手を広げて腕の内側にある傷口をフェイトに向ける。

しかし散弾の発射音よりも先にフェイトの声が響いた。
「フォトンランサー、ファイア!」
叫ぶと同時に身を屈め、フェイトの背後に隠れていた魔力弾発射体が鋭い射撃をアリシアに向けて放つ。
アリシアは散弾を発射する間もなく魔力弾を全身で受け止めた。
連鎖的な爆発により踊り場だけでなく階段そのものが粉々に消し飛ぶ。
3秒後、120発もの集中砲火により階段の周辺は跡形も無い瓦礫の山になる。

フェイトは瓦礫の山をじっと睨む。コンクリ片と共に階下へと落下したはずのアリシアの魔力反応は未だに衰える事無く感じられていた。
アリシアが復帰しない間にフェイトは飛行魔法で一気に屋外へと脱出した。空中高速機動戦を生業とするフェイトにとっては屋内での戦闘自体が不利だった。自分のフィールドに持ち込めば触手も散弾も何とかする自信がフェイトにはあった。


地上10m付近からアリシアの様子を窺っていたフェイトに大型地震が発生したような地鳴りが届く。
先程まで自分が居た校舎が上下左右に揺さぶられ、壁面に次々と亀裂が走った。
振動が最高潮に達した瞬間、校舎の窓が全て割れ弾け真っ黒い血液の奔流を吐き出す排出口と化す。ダムが決壊したかの様な勢いでアリシアの血液が噴出される。アリシアの小さな身体に収まるとは思えない血液、魔術を駆使するためのデバイスが真の力を発揮するべく展開された事を示す。
見る見るうちに校庭が暗黒の湖を形成、校内の敷地に収まりきらない血液は街へと広がっていく、道路が血管となり街中に黒い意思を広げていく。

街を飲み込む強大な魔力にフェイトは戦慄していた、
―――なのはに匹敵する程の・・・。
背中に冷たい汗が落ちていくのを感じながら眼下に現れたアリシアを見下ろす。

校庭に広がる底の見えない湖面を歩くアリシア、御伽話のように幻想的な光景だが両腕から溢れ出る血液がそんな気持ちを打ち消す。

「フェイトちゃん、これからが本番だよ。必死に抵抗して、逃げて、喚いて、泣いてね。
私は狐狩りをする紳士のように誠実な気持ちで犯してあげる」

アリシアが右手を天に翳す。それを合図に校庭の湖面が次々に隆起する。
そこに現れたのは肘関節が幾つもある奇怪な巨腕だった。拳の大きさはフェイトの身体を握り潰せる程であり、その手には無数の乱杭歯が生え揃った金棒を握っていた。
フェイトの周囲を異形の腕が取り囲む。

「ぺしゃんこにならないように、しっかり避けてね!」

アリシアの声を合図に全ての巨腕が動き出す。
頭上から叩きつけるように振り下ろされる金棒をフェイトは大きく旋回して回避、しかし休む事無く次の金棒がフェイトをミンチにしようと薙ぎ払われる。後ろに飛び跳ねるようにして紙一重の所でかわす、フェイトの眼前を通り過ぎた凶悪な鉄塊により髪が数本千切れ飛び、空中に光を反射させながら揺れ落ちる。
回避に専念していたフェイトは隙をついて反撃に転ずる。
金色の光が円弧を描き、巨腕が手首より先を刈り取られる。
一瞬動きが止まったフェイトの背中に二本の腕が同時に金棒を振り下ろす。
しかしアクロバットを思わせるフェイトの回避、返す刀で二本の巨腕がバラバラにスライスされた。勢いに乗ったフェイトはそのまま次々と異形の腕を切り刻む。
「防御を捨てて回避に全てを賭ける」教本を無視したフェイトの狂気を孕んだ戦術が空中戦で真価を発揮する。
金色のツインテールに結ばれた髪がフェイトの動きと共に舞い踊る姿は、黄金の蝶を思わせる。管理局ではフェイトの事を「戦場の妖精」と畏敬の念を込めて呼ぶ者も居る。

地上に広がる黒い湖面からアリシアはフェイトの勇姿を微笑みを浮かべながら見上げていた。
その足元から一本の槍が伸びる。
「可愛い蝶々を、捕まえなくちゃね」
アリシアは右手で目の前に現れた三叉槍を引き抜き、陸上競技の槍投げのフォームから全力で投擲した。
長大な槍がカタパルト射出された戦闘機の如く、空気を引き裂きフェイトを刺し貫くために迫る。

アリシアに対して背を向けていたフェイトは戦場の直感で背後から迫る危機を感じ取る。
振り向き様に大鎌を振り払う。
火花を上げながら甲高い金属音が響き、三叉槍が弾き飛ばされる。

しかし投擲者であるアリシアの姿が地上からは消えていた。
フェイトが周囲に索敵魔術を張り巡らせようとした矢先に頭上から甘い声が響いた。
「こっちだよ!フェイトちゃん!」
フェイトの頭上で、アリシアが野球選手のアンダースローのような姿勢で右手を背後に振りかぶっていた。
その手がフェイトに対して横薙ぎに振るわれ、アリシアの五指先端部から自身の血液が放たれる。
黒い血液は液状金属のような硬質さを与えられた極細のワイヤーとなり、五つの平行線が円弧を描きながらフェイトに飛来する。
顔面に飛んできた五つの死線を身を仰け反らせてかわす。フェイトの前髪をかすめた刃が、輝くブロンドを空に散らせた。
空振りとなったワイヤーはそのままフェイトの背後にあった時計台に接触―――凄まじい擦過音を掻きたて、直径3mのコンクリと鉄柱で作られた支柱部分がスライスチーズの如く分断され、学校創立以来存在し続けた時計台は一拍遅れて崩壊する。

アリシアが指から滴る血液を舐める。差し出された好物を美味しそうに食べる子供のように。
「凄いでしょ、私のデバイス。
変幻自在にして万能、無限に等しい程の魔力を貯蔵する事も出来る。
現代の魔法技術じゃ、とても追いつく事ができない境地にある至高の一品。
フェイトちゃんも私と一緒にこのデバイスにしようよ、きっと凄く楽しくて気持ちいいよ」

フェイトが頭上を仰ぎながら意思のこもった強い視線をアリシアに向ける。
「それでも、私が勝つよ。勝って私がアリシアを助けてあげる」

アリシアがフェイトの言葉を受けて下腹部に電気が走ったような感覚を憶える。
それは例えようもない快楽。
「良い、良いよ、フェイトちゃん。そうやって実る事のない努力をして健気に頑張ってるフェイトちゃん、見てるだけでお腹の中、熱くて溶けちゃいそうだよぉ」
アリシアが右手を天に翳す。
一斉に巨腕と触手が街中に広がった地上の湖面から溢れ出る。その数は千体以上。
「その希望が絶たれた時のフェイトちゃんが一番可愛いんだよ!」
空を埋め尽くす程の異形生物がフェイトに向かって回避不可能な圧力となって360度全方位から襲撃する。

豪快な衝突音が響き、全ての破壊がフェイトの居た地点で交差した。

そこに残されたのは無残にも引き千切られたバリアジャケット―――のマントのみ。

驚愕の表情を浮かべるアリシアは見失ったフェイトの姿を探す―――光を見つける。
黄金の輝きが空を駆け巡っていた、複雑な軌道を曲芸飛行のように飛び回りその軌跡は切り裂かれた異形の残骸が彩っていた。

ソニックフォーム。
唯でさえ薄い装甲を更に排除、防御力など無いに等しい状況になる事と引き換えに圧倒的な運動性能と戦闘速度を発揮するフェイトの超高速機動形態。
自分の命を軽視しがちなフェイトの性質そのものを表す正気にては成し得ない戦闘スタイル。
一般の管理局員はこの技を「狂気の光」と称する程である。

その姿は雷光そのもの。
日々、練磨を続けたフェイトの最高戦闘速度は既に肉眼で捉える事など不可能だった。

あっという間に巨腕も触手もその数が半減した。
アリシアは黄金が飛び駆う一帯に向けて両手を滅茶苦茶に振り回す。
十指から放たれる硬質のワイヤーが交わり、格子状の斬撃となる。目標を細切れにするために投網のような広がりを見せる死線は異形の生物をサイコロステーキのように切り裂きながら光を追い回す。

しかし、一撃としてフェイトに当たらず、光の残像を薙ぎ払う事しか出来ない。


程なくして最後に残った大型触手に閃光が走り、原型を留める事無く肉塊に変貌する。
異形生物の残骸が地上に音を立てて落下するよりも先に、フェイトがアリシアの前に姿を現していた。
その手に握った大鎌の光刃がアリシアの首を刈り取る寸前で静止していた。

「もう止めよう、アリシア。私の勝ちだよ。
約束通り、私と話をしよう。そして一番良い解決方法を二人で考えよう」
我侭を言う子供を言い聞かせる母親のように優しく語り掛けるフェイト。大鎌を持つ死神のイメージなど一切感じさせない慈愛に満ちた聖母を思わせる姿。

しかし、アリシアの口から底冷えのする嗤い声が漏れ出し、フェイトの願いを掻き消すかのように広がる。
「あっははっはぁ、優しい。優しいね。フェイトちゃん。
どこまでも本当に優しい子。それはフェイトちゃんの一番の長所だよ。
でも、その優しさが仇になってこの偽りの世界が捨てきれないんだよね。だから、お姉ちゃんが全部忘れられるようにしてあげる!」
アリシアが右手で突きつけられた大鎌の光刃を掴み、握り潰す。ガラスが砕けるような音と共に刃が粉砕された。
アリシアからの徹底抗戦の意思。

フェイトは後ろに飛び退き距離を取る。
アリシアからこれまでに無いほどの魔力が感じられた。

地上に広がる血液の湖面が揺らぎ、噴き上がる。まるで火山の噴火を思わせる程に天高く黒い血液が巻き上げられる。一本、二本と増加する噴火の柱が天を衝く。雲を衝きぬけた血液は落下する事も無く、ひたすらに上昇して行くだけだった。
アリシアは微笑を浮かべながらフェイトに向き直る。
「フェイトちゃんがね、どんなに早く動こうともどんなに避けるのが上手くても関係無い方法を考えたの。死なないように頑張ってね、フェイトちゃん♪」
アリシアの言葉が終わると血液の噴火も止まっていた。一瞬の静寂。

フェイトは頭上から押し潰された空気の圧力のようなものを感じた。
遠巻きに何かが押し迫ってくるような耳鳴りも聞こえる。
それは突然大雨が降り始めた時に感じるものと酷似していた。

―――大雨、アメ・・・雨!!
フェイトが最悪の思考に辿り着く。
反射的に全力を込めたシールドを両手を挙げて傘のように展開する。

シールドが展開されるのと、そこに無数の槍が落下してきたのはほぼ同時だった。
止む事無く叩き付けられる衝撃がシールドを支えるフェイトの両腕に浸透する。

槍の雨だった。
周囲一帯を埋め尽くす、回避する安全な場所など何処にもない空間全域を飲み込む破壊の豪雨。
地上にある建築物全てに槍が打ち込まれる。無数の槍が墓標のように乱立する地上は地獄にあると言われる針の山を連想させた。
地獄絵図そのもの―――都市殲滅兵器の本領発揮。

まるで瀑布を全身で受け止める修行僧のようにフェイトは耐える。
しかしリソースの殆どを速度に与えたフェイトのシールドは余りにも脆弱だった。障壁が甲高い悲鳴を上げ、次第にひび割れていく。

死の豪雨の中を平然と進みながらアリシアがフェイトに近づく。
空から降り注ぐ槍はアリシアに対してだけは水滴が布に染み込むように無害。
「どう、フェイトちゃん?これならどうしようもないよね。
降参しなよ。お姉ちゃんのお仕置きも今だったらキツクない方にしてあげるから、ね?」

「嫌!本当の優しいアリシアに戻って!それまでは絶対に降参なんかしない!」
間を置かずに突っぱねるフェイト。生来の頑固さ。

ため息を漏らすアリシア。
「もう変な所で頑固なんだからぁ。じゃあキツイお仕置きだね」

先程まで周囲一帯に降り注いでいた槍が、集中豪雨となってフェイトの周辺に叩きつけられる。ライフル弾の一斉掃射をダンボールで受け止めるのに等しい絶望的状況。
一秒と待たずにシールドが高い金属音と共に儚くも砕け散った。
シールドが粉砕したのと同時にフェイトは持てる瞬発力の全てを発揮して飛び退く、しかしその光にも等しい速度を持ってしても全ては避けきれない。
左の太腿に槍が突き刺さりフェイトの白い肌を貫き抉った。
右手に握っていたバルディッシュが手の平を貫通した槍に弾かれて地上に落下。
余りの激痛に空中で身をよじるフェイト。赤い鮮血が宙を舞う。
アリシアがいつの間にか手にした降り注ぐ槍の一本を手にして、突進。
手にした槍をふらつくフェイトの左肩に突き刺す。そのままの勢いでフェイトと共に空中移動。直線上にあった学校の校舎壁面に左肩を貫く槍の先端部を全力で突き刺した。
フェイトの痛苦の悲鳴が無人の校舎に響く。
アリシアはお構いなしにフェイトの太腿に刺さった槍も壁面に押し込み、右手の平を貫く槍も同じく壁面に釘を打ち込むかのように突き刺す。さながら人間杭打ち機。

火刑を待つ囚人の様に磔にされたフェイト。
その処刑台は一週間に渡る悪夢のような苛めを受けていた学校の校舎。
突き刺された三本の槍がフェイトの魔力を吸引、もはや魔法を使う事も封じられていた。


その姿を見てアリシアは抑えきれない感情を表出させる。
「ああ、フェイトちゃん血だらけだよぉ!こんなにボロボロになっちゃって。なんて可哀想なの。これも全部全部、この世界が悪いんだよ。この偽物の世界が。
だからお姉ちゃんが教えてあげる、こんな汚物だらけの世界の事なんて忘れられるぐらいに痛くて気持ち良い事してあげる」

アリシアはフェイトの肉体に抱擁を交わす。
身体を一つにするかのように密着するアリシア。フェイトの柔らかさを全身で感じる。

そっとフェイトの下腹部に人差し指を這わせるアリシア。愛撫をするかのように優しく撫でる。
そしてアリシアは爪を立ててフェイトの臍下から胸まで一直線に鋭く指を走らせた。
フェイトのバリアジャケットが薄布のように引き裂かれ、白い肌が外気に晒される。
少女である事を拒否するかのように豊潤な肢体。フェイトの肉体は早熟だった、それは同年代の少女達に嫉妬を抱かせるには十二分な魅力を放っていた。
「すごい、フェイトちゃん。こんなエッチな身体してたら、なのはちゃんが襲いたくなるのも納得できるよ」
フェイトの柔らかな乳房を掴み優しく撫で回す。子供の小さな手では収まりきらない柔肉が指の間から零れる。
そのままアリシアはフェイトのか細い鎖骨に舌を這わせる。卑猥な音を立てながら嘗め回し、鎖骨に犬歯を突き立て優しく噛む。フェイトは全身に奔る快楽の波に身体を震わせる。
「どう、気持ちいいでしょ?知ってるんだよ、フェイトちゃんが気持ち良くなる所は全部。だって私から生まれた妹の事だもの、どうすれば感じるかなんて自分自身の身体と同じように手に取るように分かるんだよ」
アリシアはそのままフェイトの腋を舐め、臍に舌をねじ込み、乳首を甘く噛む。その全てにフェイトは意識が溶けそうになりながら感じた。
アリシアはフェイトの乳房に刻まれた切り傷を見つける。先程の攻撃によるものだった。
「フェイトちゃんは、痛いのも好きな子だからお姉ちゃんがしてあげる。お仕置きもしなくちゃだしね」
乳房を弄んでいた手が凶器に変わる。
アリシアはフェイトの胸の切り傷に細い指を突き込み、傷口を掘り起こす。
胸から生じる激痛が電撃のように全身を蹂躙する。未経験の痛苦がフェイトの背筋を仰け反らせ、悲鳴で喉を震わせる。
アリシアは容赦なくそのまま中身を掻き出すかのようにフェイトの胸を掘り続ける。焼けた鉄杭を打ち込まれるような熱を持った異物感がフェイトの全身を蝕む。アリシアの小さく細い指が傷口を穿る度、鮮血により赤く染まる。
「あ、ひぃ、はぁ・・・あ、あ、ひぅ!!」
フェイトの喘ぎ声が嬲られる度に漏れる。
白い肌がキャンパスとなり、アリシアの黒い血液とフェイトの赤い血液で彩られた卑猥な抽象画を描き出す。
フェイトの悲痛な叫びを美しい鈴の音色のように聞き惚れるアリシアは更に興奮を高める。
「可愛いよ、フェイトちゃん。痛くて痛くて気持ち良いんだよね。じゃあ、もっと良くしてあげる」
アリシアの手がフェイトの首筋に伸び、そのまま万力のような力で締めつける。
「あ・・・くぁ・・・」
空に響いていた苦悶の声が止まり、消え入りそうな呻き声が残る。
アリシアはフェイトの首を絞めながら同時に乳房の掘削も続けている。
フェイトの肺腑からは酸素が消え去り、代わりに吐き出す事の出来ない痛苦の悲鳴が溜められていく。
アリシアはフェイトの耳に唇を近づけキスをする、甘い吐息がフェイトの耳に吹き込まれ耐え難い快楽が脳髄を犯す。
止む事無く続けられる愛撫。
凄惨な悦楽と痛烈な苦患が攪拌され、フェイトの全身を駆け巡り肉体を犯す。

窒息状態によりフェイトの視界が暗くなり始め、意識が落ちる寸前で喉の拘束が突然消えた。首筋から手を放したアリシアは淫らな光を宿した目でフェイト見つめている。

反射的に空気を求めてフェイトは肺に溜まった酸素を含まない空気を一気に吐き出す。
そして新鮮な空気を吸い込もうとした時、空気よりも先にフェイトの口腔内に甘い味が広がった。
アリシアがフェイトの唇を塞ぎ、呼吸する事を許さない。獣のように濃厚なキス。
熱の籠もった舌がフェイトの舌に絡まり合って蕩けそうな音を上げる。
アリシアの舌に乗せられた砂糖菓子のように甘美な唾液がフェイトの喉に流し込まれる。含みきれなかった唾液が唇から頬を伝い、糸を引いて落下する。アリシアもフェイトの口腔内の蜜を吸い込み、嬉しさのあまり恍惚とした表情を浮かべる。
フェイトもアリシアの呼気から得られる僅かな酸素を求めて唇を寄せる、母乳をせがむ乳飲み子の様。胸の中には声にならない悲鳴が残響となって蓄積する。
濃厚なまぐわい、妖精同士の淫らな接吻。

十分にフェイトを味わったアリシアは少しずつ唇を離す。
アリシアは顔を少しずつ後退させる。
少し開いた口からは舌が伸ばされ、同様に口を開いているフェイトの舌とで透明な糸が引かれ、架け橋となって繋がっていた。やがて濃厚なシロップのように透明な粘着質の糸は虚空に溶け込んだかのように消えた。

呼吸を再開したフェイトの心は真っ白になっていた。
今までに感じた事のないような感覚に身を震わせる。

アリシアは強く深い多幸感に包まれ、幾度と無く絶頂していた。
自身の秘部を触れると、熱を持った体液が指を汚した。
「ああ、見てフェイトちゃん。こんなに、濡れちゃった」
指に絡みつく粘液をフェイトの頬になすり付けながら擦り寄る。
片手でフェイトの下半身を弄る。敏感になったフェイトの体は素直に反応する。
「わぁ、フェイトちゃんも感じてたんだね。びしょびしょになってるよ」
フェイトの太腿には糸を引くように幾筋も体液が零れ落ちていた。拷問による失禁と陵辱による愛液が混じった淫靡な香気が周囲を侵食する。

「さて、そろそろフェイトちゃんの中を味見しようかなぁ。
もうなのはちゃんに前と後ろの初めてはあげちゃったんだよね。
そうすると、どの穴にしようか?おしっこの穴?お臍?耳?鼻?どこでも好きな所から犯してあげるよ」
アリシアの狂喜が生んだ嗤い声が無人の街に浸透する。
「フェイトちゃんの欲しかった幸せ・・・みんなあげるよ」



その声を遮る唯一の存在、フェイトの声が囁くように響いた。
「ごめんなさい」
ぴたりとアリシアの嗤いが止まる。
決意を秘めた表情でフェイトはアリシアを見る、その目には涙を浮かべている。
「寂しかったんだよね、ずっと一人で・・・ごめんね、ごめんね。
私一人だけが、新しい家族も作って本当の家族の事を全部忘れたみたいに幸せで・・・」
嗚咽混じりにフェイトは言葉を一生懸命に紡いだ。

フェイトの心は罪悪感に満たされていた。
本当の家族の事を忘れかけていた自分に対して強い憤りを感じた。
数年前新しい家族を得て、新しい仲間に出会ってからの世界が幸せ過ぎたから・・・。アリシアはずっと自分を家族だと思っていてくれたのに、ずっと会える日を待ち焦がれていたというのに自分は幸せな今の世界だけを見ていた。
アリシアの思いも知らずに無意識に裏切り続けていた自らの罪深さにフェイトは何よりも打ちひしがれていた。
幸福な毎日を貪る自分のせいでアリシアがこんな事になってしまったのだと。
「フェイトちゃん・・・」
アリシアはフェイトの言葉を真摯に聞き入る。
「これからはずっと一緒に居てあげる。私がアリシアの事助けてあげるから、守ってあげるから、もう寂しい思いはさせないから、もう酷い事はやめて」
フェイトの頬を涙が伝う。
アリシアの狂気を孕んだ暗い瞳が、正気を取り戻したように輝きを得る。
輝きから生まれるのは涙だった。その身に流れる黒い血流とは違う、純粋に光を帯びる美しい涙。
「本当?本当に?ずっと一緒に居てくれる?私を守ってくれるの?」
フェイトは頷く。
「ずっと一緒に居てあげるよ。だから優しいアリシアに戻って、本当はこんな酷い事する子じゃないはずだよ。アリシアは私と一緒で優しい子、クローンの私が言うんだから間違いないよ」
アリシアが当惑するような表情を浮かべる。
両手で頭を押さえる。頭から全身が割れてしまいそうな痛みがアリシアを襲う。
「そうだよ、そう。私、本当はこんな事・・・したくないのに。なんでフェイトちゃんに酷い事してるの。フェイトちゃんに会いたい、一緒になりたいだけなの・・・に」
背中を折れそうな程に反り上げて悶絶するアリシア。
幼い喉を震わせて苦悶の声が漏れる。

フェイトは辛うじて動く左手をアリシアに差し出す。
確信を得た、アリシアは何者かに操られている。
「アリシア!・・・誰が、こんな酷い事を!」
頭に流れ込む激痛により眩暈がする身体を引きずるようにしてアリシアはフェイトの差し出した手を握ろうとする、母親にすがりつく子供のように。
「た、助けて・・・フェイトちゃん。痛いよ、怖いよ、寂しいよ」
フェイトは全力で左手を伸ばす、肩に刺さった槍が肉を抉るが何の痛痒も感じない。
今こそアリシアの手を掴まなければいけなかった。


アリシアの手がフェイトの手に重なる寸前だった。
強力な魔力が世界を支配するかのように感じられた。
直後に鋭い魔力砲がアリシアの頭部に針穴をも穿つ精密さで飛来する。
アリシアは咄嗟に飛び退いて砲撃をかわす。
しかしそこに一本、二本と続けざまに放たれる砲撃。
意図的にフェイトから距離を離されるアリシア、数回の砲撃をかわして到達した地点には無数の魔力弾が鬼火のように浮いていた。その全てが一斉にアリシアに放たれる。
多量の爆撃が一つの振動となって閃光と爆炎を撒き散らしながらアリシアを飲み込んだ。

フェイトは目を見開いたまま呆然とアリシアが火焔に包まれるのを見ていた。
「アリシア!」

そこに、白い影が降り立つ。
純白のバリアジャケット、ツインテールに結われた琥珀色の髪、手にした杖からは排熱の煙が噴き出している。「白い悪魔」と呼ばれる管理局でも最悪の部類に属される戦闘力を持つ魔導士。
そしてフェイトの親友であり恋人、高町なのはが悠然と現れる。
「大丈夫?フェイトちゃん?」
高町なのはは全身を串刺しにされて磔になっているフェイトに向き直り、突き刺さっている槍を掴む。
「少し痛いけど、我慢してね」
高町なのはは一息にフェイトの左肩に刺さっていた槍を引き抜く。引きつる様な痛みにフェイトの身体が痙攣する。そのまま残った右手と左足に刺さった槍も同じように引き抜く。
支えを失ったフェイトは倒れこみ、その身体を包み込むように高町なのはが抱き支えた。
高町なのははフェイトを抱きかかえたまま、アリシアの血液が侵食していない校舎の屋上に移動してフェイトをそっと仰向けに寝かせて降ろした。
フェイトは高町なのはを見あげたまま不安顔で疑問を口にする。
「アリシアは?まさか、死んで・・・ないよね?」
高町なのはは静かに頷く。
「大丈夫だよ、かなり強力な魔力障壁を感じたし、あの程度の攻撃じゃ傷も付けられないはずだよ。それだけ強いってことでもあるけど」
それを聞いてほっとするフェイトに高町なのはの言葉が続く。
「心配したんだからね、放課後に校内で強力な魔力反応があって、私とはやてちゃんが急いで現場に駆けつけたらフェイトちゃんの鞄だけが残ってて、それから急いで管理局に連絡して緊急配備、必死の捜査網で見つけたこの封鎖領域も強固で私一人が入るので精一杯だったんだよ」
自分の知らない所で仲間達がそんなに心配してくれていた事にフェイトは申し訳ない気持ちと同時に嬉しさを感じた。
「封鎖領域を破る準備をしながら、色々な事が分かったよ。
フェイトちゃん、どうして相談してくれなかったの?ずっとクラスで苛められてたんでしょ。
私に相談してよ!どんな事があっても私はフェイトちゃんを助けてあげるんだよ!
凄く後悔したよ、最近フェイトちゃんの様子がおかしいのは気付いてたけど一人で解決したい事なのかと思ってあえて何も言わなかった。でも、やっぱり直ぐに私が相談に乗ってあげるべきだったんだって・・・」
高町なのはの目は潤んでいた。深い後悔の念。
「ごめんなさい、心配かけたくなかったの。小学校からずっと一緒で、初めてクラスが離れて寂しかったけど、それでも私はしっかり頑張れるんだってなのは達にも見せたくて、頑張ろうと思ったの・・・」
フェイトは素直に謝った。
高町なのははフェイトの上半身を抱き起こし、そのまま抱擁する。
「もう、フェイトちゃんは頑張りすぎなんだよ。
これからはどんな事があっても隠し事はしないでね、私は何時如何なる時もフェイトちゃんを守ってあげるから」
フェイトも高町なのはを抱きしめる。
「うん、うん」
囁くような返事が高町なのはの耳に届く。

突然の警告音が二人の温かい抱擁を遮った。
虚空に生まれるディスプレイは赤と黄色に点滅する枠に縁取りされていた。
管理局からの緊急通信、八神はやてが調べたアリシアの用いる魔術とそのデバイスの詳細がそこには書かれていた。
それを読んだフェイトは絶望で心を支配される。声も出せず、呼吸も止まる。
余りにも救いの無い情報が無慈悲にも通達された。

高町なのはは凄烈な眼差しでその情報を飲み込んだ。
意を決するように立ち上がる。その全身を沸き立つ魔力が覆っていた。
フェイトは混乱する意識を必死で保ちながら高町なのはに懇願するように言う。
「な、なのは、どうしよう、どうすればいいの!?」
高町なのはは、フェイトの頭をそっと撫でる。
「私に、任せて」
そう言って高町なのはは飛び去っていく、アリシアの居るであろう場所に向かって。
フェイトはただ、祈るように見ている事しか出来なかった。





お疲れ様でした。ここまでが前編です。
続きの後編はこちらのリンク先になります。

引き続きお読み頂ければ幸いです。
自作小説 | 02:27:43 | Comments(0)
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