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梅入

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魔法少女まどかマギカ 杏子メイン二次創作小説「懺悔狂談をあなたに」
という事で、珍しくリリカルなのはでもべびプリでもない二次創作を書いてみました。


魔法少女まどかマギカです。
で、そこに登場していた杏子ちゃんの妄想小説。
だいぶ短い短編になってます。

杏子ちゃんの過去のお話をこんなんもループ世界のどっかにあったんじゃないかなみたいに考えた結果です。

漫画版だとわりとあのシーンとかそこそこ細かく包丁とか出てる感じに書いてありましたけども。
そこはまぁループものですし、別の時間軸ですよ、という方向で言い訳としてもらえれば。

登場キャラみんな薄幸で可愛いんですけど、杏子ちゃんを今回は。
本来ならさやかちゃんとの百合ちゅっちゅも入れたほうが盛り上がったのかもしれませんけど、今回そこまでは入れられませんでしたのでまたなんかの機会にでも。


で、以下恒例の注意事項です。


作品内にはエッチな表現とかグロい表現が含まれております。
そういったものが受け付けないという方は、このまま続きを見ないで別のサイトを閲覧して下さい。


また、二次創作ですのでキャラクターをいじってしまってるところがあります。
そういうのが受け付けないという方もこのまま続きを見ないで別のサイトを閲覧して下さい。



そういう感じのでもOKという方は「続きを読む」で本文となりますので、よろしかったらお一ついかがでしょう。
ということでお願いします。


「懺悔狂談をあなたに」


街の中心部から離れた郊外に、異国を思わせるような白亜の宮殿がある。
純白に塗り固められた壁面と、あらゆる害悪を拭き取るかのように磨きぬかれた大理石の床。日光によって映し出される巨大なステンドグラスで煌びやかな輝きに包まれた祈りの地。そこに赴くのは夥しい数の信者。
三百人は収容できる聖堂ではあったが、既に目を爛々と輝かせた信者で一杯である。中に入れなかった者は外の広場で祈りを捧げているが、その広場でさえ膝を着いて頭を地につけて何事かを呟き続ける信者の姿が広大無辺に広がっていた。
杏子は特別な許可を得た者しか入ることを許されない、聖堂二階の部屋から外の様子を眺めていた。
「どいつこいつも・・・最初からこうしてパパの話を聞けばよかったのにね」
杏子が振り返ると、父の姿が目に映る。
裸体を晒す幾人もの女性に囲まれる中で、彼女らの膣内に射精を続ける父は今日も楽しそうだった。杏子の言葉など聞こえていないのだろう。今も自分と同い歳程度と思われる少女の小さな秘裂を陰茎で穿ってから、その深奥を抉り続けている。何度も何度も小さな肉体がくの字に歪んでも、小さな唇から悲鳴が漏れようとも、父は腰を振り続けた。少女の太股を伝った破瓜の印が、既に幾人もの女性から排出された体液と父の精液でぐちゃぐちゃになったシーツに染み込んでいく。父が少女の膨らみかけの胸に犬歯を突き立てると同時に、胎内にぶち撒けられる精液=聖水の奔流―――既に喉が枯れ裂けた少女は声無き叫びを上げながら、それまで父の首にかけていた腕を解き、そのまま湿ったベッドに力無く崩れ落ちた。その瞳は光を失い、零れ落ちる涙だけが少女の意思を表す唯一の手段だった。
少女に駆け寄る者が居た。
「ありがごとうございます!ありがとうございます!!」
自分の娘に訪れた最上の幸福を心から感謝する母親である。自身も娘よりも先に「手本」として父と交わっている。ようやく娘の順番が回ってきた時には暴れる両手を母自ら押さえていた。
もはや立ち上がることも出来ない娘を抱えると、母親は部屋の隅に正座。気を失った娘の頭を優しく撫でるその表情は喜びに満ちていた。
今日もこうやって父を慕ってやってくる信者が沢山いる。
こんなに幸せな事は無いではないか。

食べるものにも困り、生ゴミを漁って生活していた日々を思い出す。
丁度あの頃だった。現代社会では早々お目にかかれないであろう、餓死という生命の危機の瀕したあの日。自分は最後のプライドを捨てて、自分の肉体を使って金を稼ぐ事を決意した。最も愛する父親に純潔はとうの昔に捧げていたのだ。なら、自分にはもう守るべき貞操観念など無い。
必要なのはその日を生きるために必要な食い物だった。
深夜の繁華街で変態じみた嗜好の男は簡単に見付かり、そのままホテルに入った。何も言わずに男は酷い臭いを放つ肉塊を杏子の口内に捻じ込んだ。噛んだら前歯を全部折るぞ、などと脅されては何も出来ない。紅色の髪を掴まれ、何度も舌の上で男の肉が暴れ周り、突然先端部が膨らんだかと思うと喉奥に大量の粘液を吐き出された。窒息しそうになりながらもその悪臭を放つ汚泥を全て腹の中に飲み込んだ所でようやく開放された。胸部からこみ上げてくる酷い臭いが吐瀉物と共に込み上げてきた。我慢する事が出来ずにベッドの上に腹の中に溜まっていた物を全て撒き散らした。すると咳き込む杏子に男の拳が叩きつけられた。頬を殴られた杏子の小さな体がベッドの外に吹き飛ばされ、壁にぶつかってようやく止まった。
男が何事か分からない事を口汚く罵っているようだが、意識が朦朧とする杏子には聞こえない。「このまま、こんな奴に殺されちゃうのかな」とぼんやり考えている杏子の手に何かが触れてきた。

「僕と契約して魔法少女にならないかい?君の願いを何でも一つ、叶えてあげるよ」

何度か瞬きすると、床に倒れた自分の眼前に、白と赤の模様が見えた。
「あの男には僕の姿は見えていないよ。君にだけ、君にだけ特別に見えているんだ。とても運が良い事だと思うよ、このままだと君はあの男に足を捥がれ、腕を切り落とされ、あそこのバスタブで沢山の部品に解体されてから、頭部と性器だけ持ち帰られ、残りは海で魚の餌にされてしまう。そんな運命が待っているんだからね。でも、君が願い事を使って魔法少女になってくれれば助かるんだ。凄く幸運だよね、これって」
両目の視力が回復して、喋っているのが白い生き物だというのが分かった。
あぁ、幻覚だ。それとも走馬灯?あんな怪しい生き物に出会った事は無いが・・・願い事を叶えてくれるという言葉には魅力を感じた。この際、夢でも幻でも良い。最低な人生だったが、最後に願い事を言える程度の慈悲がこんな自分にも与えられたのだから。
「さぁ、早く願い事言って欲しいな。急がないと、あの男はこれからきっと君の膝から下を捻じ切ろうとしているよ。知っているんだ、偶然だけどね。あの男は君みたいな女の子を苛めるのが大好きらしくて、この界隈じゃ有名らしいよ」
杏子の腰に、床の振動が伝わってきた。男がベッドから降りてこちらに向かって来たのだ。振り返るのも恐怖で嫌になる。
「な・・・なんでも、願い事を叶えてくれるの?どんな事でも?」
「もちろん。君が魔法少女になるって言ってくれれば、直ぐにね」
杏子に意志力を感じさせない作り物のような赤い目玉が向けられていた。

あぁ、願おう。
こんなのはどうせ幻覚だ。
ただ、最後に自分の夢を口に出せる機会を与えられただけでも、運が良いのかもしれない。
「じゃあ、魔法少女にでも何でもなってやるよ。だから、パパの話を沢山の人が聞いてくれるようにしてよ。そうすれば、もっと・・・私も、私達は・・・幸せになれたはずなんだから・・・!」
これが最後の言葉なら、まぁ上出来だろう。
ふと振り向くと、男がその手に大きな鋸を握っているのが見えた。
何だよ、嘘付きやがって・・・捻じ切るんじゃなくて、鋸でぶった切るんじゃないか。
文句の一つでも白い生き物に言ってやろうかと思うと、
「この状況で『あの男から助けて欲しい』って言わなかった君には素質を感じるよ。これから長い戦いを生き残っていく才能が君にはある。だから、大サービスだ。最初に少しだけ魔法の手助けをしてあげる。他の娘には、内緒だよ?」
怪しく輝く真紅の両眼が輝きを増した。
その瞬間、男が杏子の右腕を掴むと、小さな体を片手で持ち上げた。
「やっぱり、生きたままってのは良くないな。今から、少しずつばらしてやるから可愛く鳴いてくれよ。俺はその瞬間だけ、お前を愛してやる」
視界が瞬時に反転した。男が逆の手で杏子の左脚を掴んで逆さに吊るし上げていた。
「まずは足からだ。逃げられないようにな」
左膝に冷たい金属の感触―――そこに力が込められようとしていた。
鋸刃が引かれる痛みに備え、目を瞑り、奥歯を噛み締めた。

―――来ない。
鋸で生肉を抉られ、骨を削られるなどと言う想像するだに痛烈極まりないものを覚悟していたが・・・それらが訪れる事は無かった。
そっと、固く閉じていた瞼を開くと赤が視界一杯に広まった。同時に掴まれた足が開放され、床に背中から落とされた。びしゃっという水溜りに落ちたような音が耳元に伝わり、起き上がろうとして手を床に付けると生暖かさが纏わり付いてきた。頭上を見上げると、一本の線が見える。それは男の胸から生えており、先ほどから噴出している赤い流体は男の体から噴出している物であり、良く見れば男の足は床から浮き上がっていた。
「いやぁ、君の武器は攻撃力が凄いね。これは期待して良いと思うよ」
背後、白い獣が言う。
「それが君の得た物だ。今回は特別に僕が顕現させてあげたけど次からは自分で覚えていってね」
ぬめった床の上でどうにか立ち上がった杏子が、男の姿を見た。
胸部に付きこまれた鋼鉄が、そのまま喉と頭部を貫通。鋼鉄―――それが、槍なのだと分かったのは天井に突き刺さったままになっている刃を確認してからだった。
「な・・・なによ、これ・・・」
先ほどまで力任せに杏子を引き裂こうとしていた男が、今は無残な姿で磔にされ・・・死んでいた。
「結構大きい物音がしたから、早く逃げた方が良いよ。まぁどうせこのホテルだって真っ当な場所でもないし、こんな男が一人死んだくらいは隠蔽されるだろうけど、杏子が現場に居られるのを見られては流石にまずいからね。今の君なら、この五階から飛び出して隣のビルに移動する事だってできるよ」
事態が理解できず、困惑している杏子の耳に廊下から沢山の足音が近づいて来るのが聞こえた。
逃げないと不味いというのは、疑いようも無い事実であり、現実だった。
「ほら、大切な槍を抜いて!それが無くっちゃこれから大変だよ」
言われるがままに杏子が男の死体から槍を引くと、思ったよりもあっさり抜けたと同時に男の屍骸が床に重い音を響かせながら落ちた。
視線を下に向けてみて、自分が身に付けている服が変わっている事にも気付いた。見るからにアニメや漫画に出てきそうな魔法少女を思わせる衣装だった。
「さぁ行こう。折角君の願いが叶えられた世界なんだ。こんな所で時間を無駄にしているのはもったいない」
杏子が外界に通じる窓を見やる。とても綺麗な満月がガラス越しに映った。
「あんた、名前は?」
「あぁ、うっかりしていたよ。そうだね、『きゅうべぇ』と呼んで欲しいな」
杏子が全身に不思議な力が漲っているのを感じながら、きゅうべぇの頭を掴むと自分の肩に乗せた。
「細かい事は後で説明してもらうけど、一つだけ確認させて欲しい。私の願い事は本当に叶えられたの?」
「もちろん、疑うのなら早くお父さんの所に戻ってあげれば良い。今頃、君のお父さんは大人気の芸能人みたいな状況になっているはずさ」
きゅうべぇが微笑んだ―――とても、機械的に。
気持ち悪い奴。
肩に乗せた得体の知れない化物と共に杏子は駆け出すと、窓を突き破って大空に飛び出す。
飛散したガラス片が尾を引き、月光を吸い込み輝いた。
そして、魔法少女は闇の中に飲み込まれて消えた。

***

僅かな間、思い出に浸っていると、いつの間にか先ほどまで部屋一杯に転がっていた女性達は消えていた。先ほどの少女はどうなったのだろうか。ほんの少しだけ気になった。
「杏子、おいで・・・」
杏子は隣で寝ている父の胸に身を預けると、他の女達の臭いがこびり付いていた。これを全て浄化してあげるのが、巫女である自分の役目だ。
「パパ・・・今日もお疲れ様。私が綺麗にするから、パパはじっとしててね。全部、私がしてあげるから」
慣れた所作で父の陰茎を小さな手で優しく撫でる。幾人もの女性を貫いた肉棒を舌でそっと丁寧に舐める。念入りに他人の臭いが残らないようにしてから、自分の膣内で清めるのだ。
父の股間に頭ごと埋めていると、シーツに染み付いた赤い痕が目に入った。きっとあの少女のものだろう。あの子は幸せになったのだろうか・・・。良く、分からない。
きっと父の話を沢山聞けばみんな幸せになる。そうに違いない。
だって今も宮殿の内外からお祈りを捧げる沢山の人が、父に願い事を告げているくらいなのだから。
ほんの少し前まではあれだけ邪険にしていたのに・・・。

少女の残滓を指で触ってから少し舐めてみた。
鉄の味と、女の臭いが口いっぱいに広がった。
それはいつもこうして父の体を清めている時に味わうものと何ら変わらなかった。

***

きゅうべぇから魔法少女の役割と生き残っていく上での必要な事を聞いてからは、必死だった。何度も何度も死線を潜り抜けてきた。時々、深夜に家を出て行く私を父は心配したが帰ってからいつもよりも多目にお清めをしてあげれば、いつも通り笑顔を見せてくれた。
教会に沢山の人が訪れるようになってからは食べるものに不自由する事はなくなった。母は沢山の洋服や宝石を買い込んでは悦に浸っている。たぶん、外に浮気相手が居る。妹も同じようなもので、昔は私の後ろにくっついてきて可愛かったものだが、今は夜遅くまで遊びまわっているようだ。
でも、そんなのはどうでも良かった。私が居れば父は笑顔で居てくれる。母はお金が欲しいから父とは仲良くしてくれている。妹だってお金を貰う時はお清めの儀式に参加してくれる。
とても幸せな環境じゃないか。路地裏で泥水を啜っていたあの頃に比べれば、こんなに幸せな生活は考えられない。
私にとっては家族みんなでこうして平和に暮らせていられるのなら何だって良いのだ。父の言葉に寄せられてやってくる、金目当ての本部の連中も、自分の子供すら供物として差し出してくる狂信者も、どうだっていい。
私の家族が幸せなら、それが全てなんだから。

そんな事を考えているうちに、今夜の標的を発見した。
廃工場の床面から溢れ出した魔力の奔流、入り口がぱっくりと口を開けていた。
魔法少女に変身―――既に数多の魔女を打倒してきた自慢の槍を携えて、敵陣に飛び込んだ。
魔女の生み出した不可思議な空間に入り込む度に、生き物の体内に潜り込んだような気分になる。上下左右の感覚すらも怪しくなるような気味の悪い世界。この日はクリスタルの結晶が所狭しと屹立している趣向のようだった。魔力の反応を頼りに開けた場所に出ると、居た。相変わらず形状も不定形な、ピカソの描いた絵が飛び出してきたんじゃないかと思わせる造詣をした魔女。今回のはムンクの叫びに近いのだろうか?真っ黒なゴムだか粘液だかの肉体に、苦悶の表情を象った仮面がくっ付いていた。
「よぉ、しけた面してんな」
どうせこちらの事は察しているのだろうから、真正面からぶつかってやる。
声に反応して仮面に覆われた魔女の顔がこちらに向けられた。
その途端、魔女の黒い体から四方八方に鋭い針が無数に吐き出された―――さながら超大型の指向性散弾地雷。
凄まじい面密度で迫る巨大な針を紙一重でかわしながら疾走―――避けきれない針を槍で両断、両断、両断―――穂先を地面に突き立てる―――反動を跳躍力に変換して、飛翔。放物線を描き、魔女の頭上に向かって槍を構えて突進。
「頭から真っ二つにしてやるよ!!」
両腕で握った槍を大上段に振りかぶり、全身のバネを活かし全力で叩きつけてやる―――その寸前で手が止まった。
目が合ってしまったのだ、魔女の半開きになった口の中に閉じ込められていた少女と。
それは紛れも無く、あの日父に犯された少女だ。
母親に供物にされて、純潔を奪われた少女。あの後、母親は上手く取り入った本部の人間とまた別の肉体関係を結んでいったのだと噂を聞いていたが・・・。
良く見れば魔女の顎は檻のようになっており、少女は生きたまま捕われているようだった。
「くそ、やっかいなのが・・・!いや、どのみち私の秘密の活動を知っちまったんだ。この場で消してしまえば一石二鳥か・・・」
だって、私にとっては家族以外の人間なんてどうなったって構わないんだから。
やる事は変わらない。あいつ諸共念入りに五寸刻みにしてやる!
仕切り直し、再び飛ぶ―――先ほどとは違う、走り幅跳びのように前進するためだけの跳躍。再び飛来する針の弾雨―――槍に魔力を注ぎ込み、変形。無数の節に分割された鉄鞭が全ての針を瞬時に叩き落す。
もう、今度は躊躇わない!
鉄鞭を槍に戻し、必殺の威力を込めて振り払った。
強烈な裂震を伴い、槍の穂先が魔女の仮面に叩きつけられた―――切断というよりも、力任せに割り砕いているような感触が手元に伝わっている。
「随分、固いじゃねぇか!」
それでも頭の半分程までは真っ二つにされている。あともう少し、力を込めれば一気に倒せるだろう。
「お願い!ママを助けて!!」
突然、足元から聞こえたのはあの少女の声だ。
格子状になっている顎から細い腕を伸ばして叫んでいる。
「残念だけど、私のやってる事を見ちまったあんたには、ここで死んでもらうよ!」
杏子の槍が魔女の鼻下まで切り裂くと、ようやく少女の顔が見える位置まで降りられた。残すは顎だけだ。
「違う!私じゃなくて、ママを助けて欲しいの!ねぇ、あなた・・・あの神様の娘なんでしょ?だったら、助けて!ママは今、本部で殺されかけてる!本部のお金を盗んだって・・・だから、ねぇお願い!きっと何かの間違いだから!」
少女が閉じ込めらている魔女の口内を見ると、酷く狭いというよりも攻撃を受けた結果として中身が押し潰されているようだった。このままだと少女は魔女の肉塊で圧殺されるだろう。
「自分が死にそうなのは分かってるんだろう?それでも、あんな母親を心配するのか?とんでもないお人好しだな」
「だって・・・私にとってはママがたった一人の家族だから、私が信じてあげなくちゃ誰が信じるって言うの!?だから、ねぇ・・・私はもう良いから、ママを助けて!」
杏子の脳裏に自分が魔法少女としての契約を受けた時の光景が広がった。
あぁ、こいつもか・・・。
突き立てていた槍を引っこ抜いて、魔女の薄汚い血肉を払ってから言う。
「そこ、どけ」
少女を閉じ込めていた檻の鉄柵が粉微塵に切り裂かれた。
「ほら、特別に助けてやるよ。ただし、元の世界に戻ってもお前は地下の牢獄にずっと幽閉してやるけどな。それでも良いなら、来いよ。お前のママも・・・助けてやるからさ」
手を差し伸べる―――しかし、少女はそこに手を重ねようとはしなかった。
「違うの・・・助けてくれるのは感謝するけど、そうじゃなくて・・・私はもう、終ってるの・・・だから、ねぇお願いだから、私がまだ喋れるうちに早くここから・・・逃げて」
何を言ってるのか杏子には理解できなかった。
「私はもうダメなの・・・この化物に体の中を弄られて、だから・・・もう、早く。胸の中にある・・・これは、きっともう限界・・・だから・・・」
少女が苦しそうな表情を浮かべながら言うと、その胸から強烈な輝きが放たれていた。
「お前・・・まさか!!」
「約束して!ママを助けてくれるって!そうしたら、あと少しだけ、これを抑えてられるかもしれないから・・・!」
少女の肉体に魔女の持つ全ての魔力が圧縮されていく―――それは、この広大な空間を虚無に変質させてしまうのには十分すぎるだけの強大さだった。
「・・・分かった。お前の最後の願い、聞き届けてやる」
杏子の言葉を聞いた少女が微笑む。
その晴れやかな表情を確認してから、崩壊を始めた魔女の体から離れ、全速力で走った。出口まで間に合うか・・・振り向く暇も無い。
「約束した・・・・。絶対に、助けてやるぞ!!」
少女に届けと願い、腹の底から大声で叫んだ。
その直後、この空間から音が消失した―――余りにも強力すぎる爆圧で全ての音が掻き消されたのだ。

脱出口に飛び込んだ杏子は命からがら現実世界に戻っていた。深夜の廃工場には乾いた風音だけが響いており、先ほどまでの緊迫した空気を流していく。
どこかから焦げた臭いが感じられたので、体のあちこちを確認してみると、ポニーテールに結んでいた髪の先がほんの少し焼かれていた。これだけで済んだのは奇跡だろう。
「あんな自爆目的で私を狙ったような魔女なんてな・・・。はは、随分恨まれたもんだな。結局、グリーフシードも手に入らず、余計な約束まで作っちゃって、空回りもいいところだ」
変身を解除。
少女が最後に浮かべた微笑を思い返す。
魔法少女の契約で願いを叶えてから父の元に戻った時、自分も同じような笑顔を浮かべていたのだろうか。
魔法少女になってからずっと、胸の奥に残留し続ける異物感。杏子は未だにそれが何なのか分かっていない。
あの少女なら、その疑問に答えてくれたのかもしれない。
ぼんやり、そんな事を思い浮かべながら街の明かりが広がる方へ向かって行った。


「まったくもう、これでも死なないなんてね・・・・君は少し強すぎたよ」
闇の中に浮かび上がる白と、濁った輝きを放つ赤い目玉。
「いくら増やせるとはいっても、あんなにポンポン種を狩られちゃうとなぁ・・・。まったく、本番までに潰されすぎてもバランスが崩れちゃうよ。色々と上手く調節しなくちゃいけない僕の立場も考えて欲しいんだよね」
白い悪魔が無表情のまま続ける。
「仕方ない、君には別の方法で反省してもらおうかな。ほんの少しルール違反かもしれないけど、所詮は僕の考えたルールなんだから、良いよね」
悪魔の小さな笑い声が闇に混じり、溶け込んでいった。

***

数日後、いつものように魔女を狩ってから帰宅した杏子。
そこに待ち受けていたのは、父からの罵声だった。
「この魔女め!!私を騙していたな!!」
玄関を開けると直ぐに鎖で両腕を拘束されてしまった。
今は天井に供えられている滑車で宙吊りにされている。父の目線と同じ高さのせいか、憤怒に歪んだ顔が良く見えた。
「私の救いの言葉を悪用して、何を企んでいる!?何時から・・・何時からだ!本当の娘だと思っていたのに何時から悪魔になった!」
杏子は怒り狂う父とその周囲を眺める。
ここは聖堂の地下室で父の教えに背いたり、自ら父に贖罪を願った者が連れ込まれる処刑場だ。ここにぶち込まれて戻ってきた者はまず居ない。自分がいつも原型も残っていない残骸をビニール袋に入れて片付けているのだから良く承知している。
「パパ・・・落ち着いて。どうして私が魔女なの?ずっと、一緒に頑張って来たじゃない。落ち着いて、冷静になってよ。きっと、少し疲れてるんだよ」
杏子が出来る限り優しい声で伝える。父が何か辛いことがあった時にはいつもこうして元気付けてあげていたのだ。だから、これで正気に戻ってくれ―――
炸裂音。強烈な光が薄暗い部屋を瞬間的に照らす。
杏子は腹部から全身に広がる激痛で意識をどうにか保つので精一杯だった。
「またそうやって甘言を用いて私を騙すつもりだな!!貴様の言う事などもはや信じない。私の元には本当の天使がやって来た!全ての真実を伝えるためにな!」
父の握ったスタンガンから火花が走っていた。
自分の臍の横辺りから立ち込める肉の焦げた嫌な臭いが鼻をつく。
「ふふふ・・・無様な魔女ね」
父以外の声。
地下室の扉、その直ぐ横に立っていた黒髪の少女。衣服は一切身に付けておらず、艶やかな白い肌が黴臭い地下室に晒されている。少女が裸で居る事自体はこの聖堂では良くある事なので驚きはしなかったが、背中から伸びた純白の翼には目を奪われた。
「あなたが天からの御遣いを殺して周る悪い魔女だって、お父様に教えてあげたのよ。こうやってしっかりと証拠の映像も見せてあげてね」
少女が右手を少し掲げると、虚空に浮かび上がる光の格子。
そこには杏子が魔女と死闘を繰り広げている壮絶な姿が明瞭に映し出されていた。
「神様から遣わされた天使を片っ端から邪悪な槍で切り刻む魔女。本物の杏子ちゃんはずっとずっと前に魔女に食べられてしまったの。だから、今そこに吊るされている偽物で災厄の元凶である魔女を浄化させなくちゃいけないの」
黒髪の天使が父の隣にやってきて囁きかける。
その目は血色の妖光を放ちながら杏子を嘲笑っていた。
「お前!お前がパパに!!くそ・・・ぶち殺してやる!!」
杏子がソウルジェムに魔力を込めようとしたが・・・反応が無い。いつも肌身離さず、今も上着の内ポケットにしまってあるはずなのに。
「探し物はこれ?」
黒髪の天使が右手を広げて杏子に見せる。その手の平には杏子の魂があった。
「私が大切に預かっておきますね。事が終ったらちゃんと返しますから、安心して下さい」
そう言うと黒髪の天使は背を向けて扉に向かった。冷たい鉄扉に手を掛けてから一度振り返る。
「じゃあ、後は親子水入らず仲良くしてくださいね。あ、巫女としての役割は私が代わりにやっておきますからご心配なく。では、ごゆっくり・・・」
扉が閉まる寸前、白い羽が地下室に一枚ひらりと舞い落ちた。
杏子が扉に向けてあらん限りの声を振り絞ってやろうと思ったが、それが全て父から受ける数々の陵辱に散った。
散り続けていった。


両手両足に杭を打たれ、壁に縫い付けられた。
腹にも胸にも杭を穿たれた。
死を体感した。
黒髪の天使が現れる。
「まだまだ、魔法少女は魔力さえあればこんなのかすり傷なんだよ」
ソウルジェムの魔力を使って、致命傷を負ったままでも死ねない頑強さを与えられる。
父が信者を数人呼んできた。
その手には焼けた鉄串―――その全てが杏子の下腹部を貫くようにして突き刺さる。臍下が内部から焼かれ、麻痺しかかっていた杏子の痛覚が再び蘇る。
一度鎖を解かれて床に降ろされ、ズタボロになった衣服を全て剥ぎ取られた。
胸と腹から杭を引き抜かれると、傷口が開き大量の出血が冷たいコンクリート床に広がった。
信者の男達が杏子を無理矢理に立たせると、杭で開けられた胸と腹の穴に指を捻じ込んだ。体内を掘削するようにしてガリガリと引っ掻き回す、その度に杏子の体が痙攣し、浮いた足先が跳ね回った。
杏子の秘部から赤く染まった小水が溢れ出す。生理中の血液を思わせる体液の臭いが地下室に溢れかえる。
男達が杏子の傷穴を抉るのを止めた。
代わりに指よりも遥かに太い怒張した陰茎を赤い肉穴に捻じ込んだ。
鉄杭で開けられた穴の全てに男達の肉具が埋め込まれると、激しく中身を抉り始める。背中から付きこまれた男の先端部が杏子の眼下で胸の穴を何度も出たり入ったりしているのが見えてしまい、発狂しそうな異物感と痛撃で悲鳴をあげようとするも、生憎肺に開けられた穴のせいか、ひゅーひゅーっと血泡混じりの吐息だけしか出てこなかった。男達の穂先が胸と腹の内部で膨張するのが感じられた。直後、骨肉や臓器に直接ぶち撒けられた精液の熱が脳髄まで直接届いた。
杏子の視界が真っ白に染まり、意識が途切れた。

次に目を覚ました時には再び高い場所から吊るされていた。
今度はクレーンの鉤爪で両手と腹を貫かれていた。鉄杭や男達に蹂躙された傷口の痛みは継続していたが、痛覚が麻痺してきたのか既に己の肉体ではないように感じてきていた。
そんな中、爪先に熱を感じた。霞む視界の中、足元を見下ろして絶句する。
煮え滾った熱湯。
人間を丸ごと放り込んでも余りある大きさの釜の中に、ぐつぐつと煮え滾った熱湯が見えた。釜の周りでは沢山の信者が順番に焚き火へ薪をくべていた。想像するまでも無い、これから自分はあの中に落とされるのだ。生きたまま茹でられるのは、熱で死ぬのが先か窒息で死ぬのが先か・・・それとも、自分はそんな常人なら死ぬべき状況でも死ねないのか。想像しただけで震えが止まらなくなった。
眼下で、薪をくべる者に目をやると見知った顔が映った。
「ママ!!ママ!!助けて!!お願い!!」
母に助けを求める。誰だって良かった、こんな悪夢から助けてくれるのなら。しかし、母は杏子の顔を少し見ただけで、薪を炎の中に放り込むとさっさと群集の中に戻り、そこにいた妹と方を寄せ合っていた。
「あ・・・あ・・・」
杏子の涙が体を伝い、釜の中に落ちる。
巨大な鐘の音が炎の明かりに照らされる地下室に轟々と響いた。群集の目が一点に集まる。そこには地下室に作られた祭壇上で墳怨によって鬼の形相と化した父の姿が見えた。もはや何を言っているのかも分からない、叫び声だけが祭壇から撒き散らされ続ける。
そして父の後ろで静かに微笑みながら見守っている黒髪の天使の姿があった。
「どう?大切なパパに裏切られて、小さな望みのママにまで見捨てられた気分は?」
直接頭の中に語りかけてきた。
「お前・・・絶対に許さない・・・殺してやる」
「ふふ、随分嫌ってくれたみたいだね。まぁこのショーももう少し続くから、ちょっと待っててよ」
それだけ伝えると、黒髪の天使が祭壇の上に上がってきた人影を指し示した。
そこには一人の女性―――見覚えがあった。そう、約束した少女の母親だ。己の欲望のために娘の純潔すら捧げた、救い難い女。それでもあの娘は自分の死をも構わずに助けてくれと言った。
そして、約束したんだ。
少女の母親は荒縄で縛られた状態で父の前に連行されてきた。
父は激昂し、大声で何事かを怒鳴りつける。女性はただただ謝り続けている。
乾いた破裂音―――立て続けに三回。
父が握った拳銃からは紫煙が零れ、顔面に三発の銃弾を受けた女性はその場で崩れ落ちた。
「う・・・あぁ!!」
約束は守れなかった。
自分は無力だった。
「いやぁ残念だったね。君のパパにね、あの女の娘も魔女の関係者だよって教えてあげたのさ。ほら、君が捕まる直前に戦っていたあの映像を見せてあげながらね。そうしたらもう凄い勢いで怒ってたよ。まぁどのみち本部のお金に手を出したんだから、遅かれ早かれこうなってただろうけどね」
祭壇上に居るのは天使などではない、悪魔だ。それも飛びきりの。
「お前だけは絶対に許さない、必ず復讐してやるからな!」
「あはは・・・そうだね、当然そう思うよね。でも、残念ながらそれは無理なんだよ。まぁ、もう少ししたら分かると思うけれど。少なくとも、もう君の前に私は二度と現れないよ。それだけは神に誓って契約してあげるよ。君がこれまでやってきたみたいに余りにも一生懸命魔女を退治しすぎない限りはね。物事には程々ってものがあるんだよ、パパのために正義の味方をやりたかったのは分かるけど、君は少し頑張りすぎたのさ。まぁ、これで懲りたろう?今後は自分のためだけに魔法少女として生きていくことをお勧めするよ、その方が健全さ」
黒髪の悪魔が微笑みかけてきた。
杏子はあらん限りの力を振り絞って絶叫した。
同時に父が自分を指差して、大声で叫んだ。その途端、頭上で金属音が響くと同時に自由落下が始まった。一直線に煮え滾る釜の中へ落ちてゆく。
最後に愛する父の顔を見た。
「大好きだよ、パパ」
父の顔はいつものように優しい笑顔に見えた。
目を瞑り、それだけを思い出にして杏子は釜の底へと沈んでいった。

***

気が付いた時には、床に転がっていた。
釜に落とされてからの記憶がまったく無いがあの後、釜から引きずり出されて更に陵辱でもされていたのだろうか・・・。もう、何も覚えていない。
どこか体に欠損は無いかと確認するが、不思議な事に体中に開けられた穴も塞がって傷は全て無くなっていた。代わりに全身を包む倦怠感が残っている。魔力を大量に使った時に生じる状態と同じだ。
裸のままでは流石に寒かったので、近くにあったテーブルからシーツを取って体を覆うことにした。
周囲を見渡すが、既にこの地下室には誰も居ない様子だった。物音一つ無く、寂然としている。覚束ない足取りでどうにか立ち上がると、鉄扉に向かい上階である聖堂へ続く通路に出る。ゆっくりと階段を上がっていくがその間も人の気配はまったく感じられなかった。長い階段を上がり、どうにか聖堂へ続く扉までやってきた。そこを開ければ日の光がステンドグラス越しに入ってくるはずだ。何日ぶりかも分からない光を浴びられる。
木製の扉を静かに押し開けた。
鮮やかな彩色に照らされる聖堂。
普段通りなら荘厳な雰囲気すら感じさせる光景のはずだった。
しかし、杏子の目に最初に映ったのは天井から伸びた幾つもの人影だった。梁に結んだ縄で蓑虫のようにぶら下げられた幾つもの絞殺死体。誰も彼も、紫色に染まった苦悶の表情で固まり、尿や大便を床に垂れ落としながら死んでいた。恐らく、地下室に居た人間全員がこの広い聖堂を埋め尽くすかのように死に尽くしているのだ。
「パパ・・・パパは・・・!?」
杏子は天井から干し柿のように吊るされた老若男女の死体を見上げながら走った。途中で床を汚す体液で足を取られながらも、子供から大人まで余す所なく同様に吊るし殺されている屍を確認し続けた。
聖堂の中でも一際目立つ祭壇、最後に確認した場所。
父は祭壇の上で吊り下げられていた。父の隣には母と妹・・・更にもう一つ、恐らくは黒髪の天使と思われる死体が並んでいた。なぜか天使の死体だけは顔がズタズタに切り刻まれた挙句、眉間に凶器であるナイフを突き立てられていた。一体どんな経緯でそうなったのかは分からないが、杏子が討つべき仇が居なくなったのだけは確かだった。
「こいつは、こうなる事が分かってたのか・・・」
死体を見上げていると、天使の手からポロリと何かが落ちてきた。杏子が両手で受け止めると、そこには自分のソウルジェムとグリーフシードがあった。
「やっぱり、こいつは魔女だったのか・・・?」
もはや死体からは魔力を感じられなかった。グリーフシードが出現した事から考えても、既に死滅しているのだろう。
奪われた。何もかも。
魔法少女になって叶えた奇跡を全て、奪われてしまった。いや、むしろ奇跡を起こす前よりも酷い結末だ。
今まで、自分は何のために命懸けで戦ってきたのか・・・。父の苦しみぬいて死んだであろう酷い死に様を見て、杏子は自身の心に虚無の染みが広がっていくのを感じた。
「私が、願ったのが・・・悪かったの?パパが幸せになって、みんなが幸せになって、それで良いと思ったのに。誰か・・・答えてよ・・・!神様いるんでしょう!?パパが信じていた神様はどこにいるの!出てきてよ!!なんで、助けてくれないのよ!!」
杏子の悲声が虚しく聖堂に散っていく。当然、誰も答える者は現れない。
ただ天井の梁が幾つもの重みで軋む音だけが、ぎしりみしりと幾つも重なって聞こえてきた。

ぎししみしみりしぎぎぐしぎぎいぐいしいぎいいしいいしみりりぎぎぎぎしいいいいしいいいぎみりしいいしみししりりぎぎぎぎっしいしみりりしちちいいい

それは怨嗟だった。
杏子にだけ向けられた呪詛。
「あ・・・あ・・いや!!いやぁあああああ!!」
走った。
一刻も早く、この場から去りたかった。
振り返ることも無く、行く当ても無く、ただただ走った。
どこでもいい、あの音が、あの声が聞こえない所なら・・・!



杏子の足音が聞こえなくなった聖堂。
吊るされた数多の死体の中で、蠢く影があった。
黒髪の天使。
その肉体が真っ白いゼリー状の物体に変質し、床に落ちると徐々に形を整えていく。
「いやぁ、上手くいったね。あの父親も素直でとっても良い人だから助かったよ。もう少し娘の事を信じてあげれば良いのにねぇ、まったくこれが現代社会の問題ってやつだね。まぁなんにせよ、これで杏子も前よりは大人しくなるだろうし、扱い易くもなるかな?そろそろまどかも成長してくる頃だろうし、時が近づいている。準備は着実に進めておかないとね」
赤いビー玉のような目に無機質なぬいぐるみの仮面を貼り付けた白い怪物は、音も無く物陰に向かうとそのまま何処かへと消えていった。
聖堂にはたった一つ主を失った輪っかが残され、ぷらぷらと所在無げに揺れていた。



*****


杏子は背中に届く足音に気を配りながら歩を進める。
訪れるのも久方ぶりになる思い出の地。昔は父の背中を追いかけるように小走りで登った坂道だが、今は自分が先頭を進む立場になっていた。
これからあの場所に行って、話をしてやるのだ。きっとこいつも喜ぶだろう。
お前は一人じゃない。お前は私だ。
道すがら思い出した自分の過去と失敗・・・繰り返し、何度も何度も記憶が擦り切れるまで悪夢として蘇る、奇跡の結末。

もう目的地である聖堂は見えていた。あれ以来、来た事は無かった忌まわしい呪いの地。
「さやか、あそこだ。遠くまで付き合わせちまって悪いな」
こいつはあの時の私と同じだ。
だから助けたい。こいつを助ければ自分は幾らか救われるように思う。
少しでも良いから、私が今も生きている意味を見出せる気がする。
奇跡で全てを失った自分を今度は助けてやるんだ。
だから、私の話を聞いて欲しい。

あぁ・・・今の私は、パパみたいだ。
きっとパパも奇跡の力が無いときはこんな気分だったのかな。
似たもの親子だね。

ねぇ、さやか。
あなたは私の話、聞いてくれる?

***完***
2011/5/5
自作小説 | 02:45:41

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